氷川きよしは、この日、「限界突破✖️サバイバー」と「大丈夫」の2曲を歌った。
このどちらもの曲が彼の今年の多面性を非常によく現している。

「限界突破」は見事だった。
ハイトーンボイスは非常に張りと伸びのある綺麗なストレートボイスで、まさにロック歌手の典型を行く歌声だ。
それに対して「大丈夫」は、こぶしの効いたエネルギッシュな音量がどの音域にも響き、演歌歌手以外の何者でもない。
非常に対照的な音楽だった。

アニソンという最も現代的な音楽と、演歌という最も古典的な歌謡曲。
この全く性質の異なる歌を彼は難なく歌いこなす。

基本的に使われる歌声は一緒だが、用いるテクニックによってこれらの音楽を歌い分けている。
流石に20年、演歌界のトッ
プを走り続けてきただけのことはある。
その基礎力があるから、いわゆる潰しが効く。
ロックの分野に限らず、JPOP,シャンソン、ヨイトマケの世界まで歌いこなす多面性は、彼ならではのものだろう。

42歳という年齢を感じさせないハイトーンボイスは、彼がこの先も多様なジャンルに挑戦できる可能性を示唆している。
おそらく彼は非常に丈夫な声帯の持ち主であり、厚みを持った声帯であると感じられる。
そんな彼でも数年前にポリープの手術をして以来、高音が戻ったというのだから、歌手業を長く続けていくというのは過酷な仕事でもある。

「自分のやりたいことをやる」と決めた彼が来年、どのように進化していくのか、その可能性は無限だと感じた。