12月26日、日本武道館にて行われた、郷ひろみ『50周年プレミアムコンサートSpecial Version~50times50~』を拝見した。
素晴らしい、の一言に尽きるほど、今年、拝見した数多くのコンサートの中でも飛びきりのレベルだったと思う。
50年という半世紀にも亘る長きに渡って、彼はずっとアイドルだった。
アイドル以外の何者でもなく、67歳になる現在もなお、アイドルであり続けている。
日本はアイドル文化、アイドル社会だが、現代のアイドルと何が違うかと言えば、彼の時代のアイドルと呼ばれた人達は、皆、ピンだった。
ピン、即ち、1人だということ。
デビューした時から、1人であり、ピンでアイドル活動を行ってきた世代でもある。
松田聖子といい、彼といい、長きに亘ってアイドルであり続けてきた人は、あらゆる面で根本的に何かが違う、と感じる。
この日、彼は50周年を記念して50曲を歌うと告知していた。
通常で歌えば、6時間は裕に超える曲数である。
だから、メドレーという形になると話した。
だが、実際に歌を聴いてみれば、メドレーになったのは、ほんの一部。
多くの楽曲はフルバージョンで歌われた。
そして、4時間近くのステージをほぼ舞台上に立っていて、通常、どのライブでもよくあるダンスメンバーやバンドメンバーによるインターバルもほぼなく、衣装替えも、暗転を使ってステージ上で上着を取り替えるだけ、というほぼ出ずっぱりの状況でステージが進められた。
この1日限りのプレミアムコンサートの為に、彼がどれほどの時間を使って準備してきたのだろうかと思った。
そして、満員のお客さんを決して裏切らないだけの歌とパフォーマンスを見せる。
郷ひろみはどこまで行っても、何歳になっても、郷ひろみ以外の何者でもない、ということを彼は証明して見せたのだと感じた。
私は彼より少し下の世代だが、彼がデビューした頃のことは記憶にある。
新御三家と呼ばれて活躍していた時代、私は3人のうちの他の歌手のファンだった。だから、正直なところ、彼の歌をそんなに知っているわけでもなく、また、私の記憶の中に鮮明に残っている彼の歌声は、今とはずいぶん印象の違う歌声である。
だが、その後、彼がニューヨークに3年滞在し、発声を根本から変えたことにより、全く違う歌声になったのも記憶にある。だから、今回、彼の生歌を初めて聴き、50曲を歌い通してなお、一切、声が掠れることなく、最後の最後まで伸びのある歌声を披露したのを聴いて、彼の歌声の進化が素晴らしいと感じた。そして、正しい発声を身につければ、何歳からでも、何歳になっても、伸びのある歌声で歌い続けることが出来るんだということをあらためて感じた。
最後の最後に歌った曲『言えないよ』は、私の大好きな曲であり、彼のイメージを一新した楽曲という印象を持っている。
「50times50」という言葉に込められた意味と共に、素晴らしい一夜限りにコンサートだった。