9月3日に日本武道館で行われた『Seiko Matsuda Concert Tour2022 My Favorite Singles & Best Songs』のファイナルを観た。

一言で言えば、圧巻。

終始、圧倒された3時間近くだった。

私は彼女のコンサートを4年前から拝見している。そして、4年経った今、彼女の印象は何も変わらない。

これが永遠のアイドルと呼ばれる所以だと感じた。

 

アイドルと呼ばれる人からアーティストへの移行は正直、非常に難しい。

何人ものアイドルがアーティストへ移行していくのを見ているが、うまく行っている人は本当に少ない。

うまく行っている人とそうでない人の違いは、やはり歌手としての実力。

歌という根本の土台の部分がしっかりしていなければ、どんなに人気があってもアーティストへの移行は難しい。

アーティストへの転換ができるかどうかは、歌唱力などのテクニック的なもの、そして表現力、さらには、イメージを転換する楽曲との出会いに恵まれているかどうか、

これらが重要な鍵になる。

今までキラキラと煌びやかな世界でアイドルとして自分を打ち出してきた人が、実力が問われる世界へ転換していくためには、今までのイメージを払拭できるだけの新しいイメージが必要になる。

イメージを壊すというのは、非常に勇気のいる作業であり、うまくいくかどうかは未知のものだ。

ただ、そこに歌の実力があれば新しいオリジナルの世界を作り出すことができる。

そのためにはいい楽曲との出会いが不可欠である。

そういう点で、松田聖子というアイドルは非常に恵まれたと言えるだろう。

 

彼女の転換点となった楽曲は、『SWEET MEMORIES』

この楽曲を今季のツアーで彼女は歌っていなかった。

だが、ファイナルの4度のアンコール(4度というのも今季初)に応えて、選んだ楽曲が『SWEET MEMORIES』だった。

この楽曲が流れた時、

そして彼女の歌声が聞こえ始めた時、

会場の雰囲気は一変し、静寂の中に彼女の歌声だけが響いていく。

 

「この曲との出会いが、私の転換点だった」

のちに彼女がコンサートで話した言葉だ。

 

この曲は、テレビのCMソングで、最初は歌手のクレジットなしで放送された。

この曲はアルバムに入っていたものだったために、聖子ファン以外は、この曲を知らず、当時、少しハスキー気味の気だるい歌声に「誰が歌っているか」と問い合わせが殺到したとのエピソードがある。

その後、松田聖子が歌っていることがわかり、それまでの「ブリブリの聖子ちゃん」というアイドル路線から一変して、大人の歌を歌える歌唱力に多くの人が彼女に対するイメージを変換した楽曲だ。

 

彼女の少しハスキーで透明感溢れる歌声は、ジャズにはピッタリの雰囲気だったかもしれない。

この楽曲を契機に彼女はアイドルから大人のアーティストへの移行が行われていったと思われる。

 

しかし、それでもなお彼女はアイドルだ。

今年、還暦を迎えてもなお、アイドルとして輝きを失うことはない。

ブリブリのドレス、ピンクにフリル、リボンといった「カワイイ」の代名詞のような衣装を身につけても、何の違和感もない。

それと同時に一転、黒のロングドレスに身を包んで、しっとりと歌う。

 

この2極性が彼女の最大の魅力でもある。

 

この日、『SWEET MEMORIES』が聴けただけで、私は満足した。

それぐらい、この日の彼女の歌声は絶品だった。

アコースティックコーナーから、アカペラで何十曲も歌っていくリクエストコーナーを経て、彼女の歌声はエンジンがさらにかかり、伸びやかで一層透明感が増した。

後半のヒットメドレーは彼女も会場も一体になる瞬間だ。

彼女からのエネルギーをチャージして、会場全体が揺れていく。

 

そんな彼女はやっぱり永遠のアイドルだった(笑)

 

 

※著者が連載している青春出版オンライン『人生を変えるJ-POP』の第7回に松田聖子さんを扱っています。

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