なぜ、今頃?と言われそうだが、ドラマが最終に近づくに連れて、この歌の言葉の一つ一つが胸に突き刺さってくる。
それはウクライナの人たちの今に想いを馳せさせるからなのかもしれない。
アルデバランは、牡牛座の一等星のことであり、「後に続く者」という意味がある。
明るい星のように輝く未来を次世代へと繋いでいって欲しいという思いが込められている歌でもある。
AIの歌声の印象はエネルギッシュでパワーヴォイスという印象が強かったが、
結婚、出産を経て、その歌声に丸みと優しさが年々、増すようになった。
少しハスキー気味であるのに、ソフトな歌声は、彼女独特の温かさと丸みを帯びて、全てを包み込むような包容力を感じさせる。
「君と私は仲良くなれるかな
この世界が終わるその前に」
AメロからBメロへの彼女の歌声は、一つ一つの言葉を丁寧に紡いでいく。
訥々と歌い続けていくその歌声には、温かさの中にも冷静さが潜んでいる。
「笑って笑って 愛しい人」
このフレーズで彼女の歌声の色彩は、一瞬で優しい音色に生まれ変わり、
「不穏な未来に 手を叩いて」
このフレーズでは、一変、直線的な音色が現れる。
さらにサビの前半である
「君と 君の大切な人が幸せであるそのために」
このフレーズで一度、音楽は落ち着きを持って、意思の強さを確認するのである。
そして最後のフレーズ
「祈りながら sing a song」
ここに願いが集約されている。
このフレーズを彼女は、エネルギッシュに歌い飛ばすのではなく、噛んで含めるように大切に大切に、
しかしながら、強い意思を持って、歌い納めていく。
この楽曲が発表された11月の頃は、世界はコロナ禍の中で、会いたくても会えないでいる状況の中、小さないざこざが各地で芽生えている時期だった。
しかし、今、ウクライナの状況を見るにつけ、
この曲の言葉の一つ一つが、AIの歌声と共に、重く私たちの上にのしかかる。
何も手を出すことの出来ない、自分の無力さと共に、祈るしかない。
そして、この歌の言葉そのものが、
ウクライナの人々の心へ届き、さらにロシアの人々に届くといい。
誰にでも、
大切な人はいるのである。
それは国を跨ぎ、人種を越えて、人類不変の感情である。
毎朝、この歌を聴きながら、
日本にいることの有り難さと、
いつそれが脅かされるかもしれないという状況に
平和を願うことしか出来ない。
歌が、
音楽が、
二つの国の人々の耳に届くのはいつだろう、と思いながら。