関ジャムで古田新太が書いた詞に丸山マナブが曲をつけ、三浦大知がダンスユニットs**t kingzとパフォーマンスした「ユニットバスのマーメイド」
古田の冗談のような一言から始まった楽曲だが、非常にいい曲に仕上がっていた。
この曲の三浦の歌は、いい意味での抜け観がある。
最近、三浦大知の歌声は多種多様な色を見せ始めた。
ピンと張り詰めた糸のようなストレートで細い澄んだ響き、
太めの幅のあるソフトボイス、
そして無色なブリージングボイス、
さらにはハイトーンボイスのシャウト、
そしてファルセットと、実に多様な色合いを見せ始めている。
その中でこの曲に使われている歌声は、抜け観のあるブリージングボイス。
この抜け観というのが歌手にとっては一つの関門になると私は感じている。
綺麗な歌声や張り上げる歌声、さらにシャウト音などのエネルギッシュな歌声は、実はそれほど難しいテクニックではない。しっかりと体幹を鍛え、ブレスを安定させれば、誰でも容易に作り出せる声の種類になる。
しかし、ファルセットや無色のブリージングボイスは、安定した声を出すのが難しい。
どうしてもボリュームが下がり気味になるファルセットをどれぐらい安定させてヘッドボイスに転換させられるかは、ハイトーンボイスの歌手の課題の一つになる。
三浦大知の場合、ハイトーンボイスと言い切れるほど高音域の歌手とは言えない。ただ、近年の彼はこの高音域を非常に伸ばしてきていることは確かである。
彼の場合、ミックスボイスでギリギリの高音域まで歌い、ファルセットに切り替えるボイスチェンジが明確だった。
その為、チェンジした途端、ボリュームが下がる部分をどのように処理するかは課題だったと言える。
しかし、最近の曲を聴くと、この課題が解決されているのを感じる。
それは「Backwards」のカップリング曲「About You」での歌唱に顕著だ。
この曲で彼は完全にボイスチェンジの課題を克服したと私は感じた。
その進化の現れとして、今回の「ユニットバスのマーメイド」の歌唱が挙げられる。
この曲に於いての彼の歌声は「抜け観」である。
バスルームの湯煙の空気感を彼は「抜け観の歌声」で現した。
その無色観は湯気に溶け込むように歌われている。
この湯気に溶け込む歌声を彼は「抜け観」で現しているのである。
「抜け観」の歌声は、自然体だ。
どこにも余分な力が入らず、さながらに息をするように歌う。
これが出来るかどうかで、歌手の表現力は格段にアップする。
三浦大知のピンと張った歌声にこの抜け観のブリージングボイスが加わると、まさに多種多様な色彩を現すことが出来る。
上手い歌手は、この抜け観を利用して、楽曲の世界観を伝える。
息をするかのように歌えるかどうか、
これが歌手の一つのバロメーターにもなると私は思う。
三浦大知の歌の進化は、ここに来て、さらに加速している。
本当に上手くなったと思った。
そして「ユニットバスのマーメイド」は、是非、発売して欲しい楽曲だ。
インパクトのある歌いだしのメロディーは、今までの三浦大知の世界観を大きく広げ、印象を変えていく。
楽曲化される事を強く期待している。