韓国のアイドル文化が変化してきたという記事を読んだ。

少し前まではKPOPアイドルの寿命は短いのが当たり前で、入隊までに稼げるだけ稼ぎ、除隊後は実業家や俳優に転身していくのが当たり前だったが、最近では日本と同じようにアイドル活動をずっと継続するグループが増えているとのことだった。

 

日本ではジャニーズアイドルに代表されるように少年期でデビューしたのち、青年期を経て、中高年になってもずっとアイドルグループとして活動を続けるというのが当たり前になっている。

アイドルグループだけでなく、日本の場合、歌手と共にファンも年齢を重ねていくというのが当たり前で、ずっと長期に渡って歌手を支え続けるというのが、日本のファン社会の大きな特徴の一つになっている。

しかし、歌手が長期に活動をしていく場合、その活動を支えるファン社会の年代構図は大きなポイントになるのも確かな事だ。

同世代のファンが多い場合は、歌手と共に年齢を重ねていくので、経年に伴うファンの減少に伴う影響は、それほど大きくないかもしれない。しかし、アイドルの場合、同世代と同じぐらいの比率で、それより上の世代をファンに持つ人も多い。

例えば、演歌の貴公子であった氷川きよしの場合は、演歌というジャンルの特殊性も手伝って、氷川きよし本人よりも上の世代が圧倒的に多いファン構図になっている。

会場に行くと、目に付くのは、70代以上の高齢層である。また50代、60代も非常に多く、逆に氷川きよし本人よりも年下の30代、20代のファンは非常に少ない。

彼自身は40代前半であり、このまま普通に活動を続ければ、まだ30年ほどは活動を活発に出来ると思われる。その時、ファンの構図がこのままであるなら、非常に数が減っているという懸念はついて回るだろう。

彼の活動を安定的に支えるには、若い世代、即ち、彼よりも年下の年齢のファンを増やしていくことが急務だと思われる。

一昨年、ポピュラー分野に進出した彼は、演歌というジャンルに縛られない活動をすることで、近年、若い世代のファンを確実に増やしている。

これは非常に重要なことだ。

歌手活動を安定的に継続する為には、ファンの存在がなくてはならない。

 

ここからは私の自論なのだが、

歌手が安定的に活動を続けるのにはファンの存在は不可欠で、その構造がどのようになっているかは非常に重要なことが2つあるように思う。

 

1つは、ファン社会の年代的構造だ。

例えば、サザン・オールスターズなどは、親がファンで、その子世代もファンという例が珍しくない。

これは先ず、長年に渡ってのコンスタントなサザン自身の活動もあるが、それに伴って、ずっとファンも継続的に応援をし、独身だったファンが結婚し、子供を育て、さらにその子供がサザンの音楽を聴いて育つことで、自然とファンになっていき、ひいては、親子でコンサートに来る、という世代間の交流が非常に上手くいっていると思われる例である。現に私の娘も息子もサザンのファンであり、曲を過去に遡ってよく知っている。

こうなるとファン社会は構造的に非常に強くなり、強固なファンダムが形成されるのである。

 

2つ目は、ファン社会の新陳代謝だ。

先の氷川きよしの例をみても分かる通り、歌手本人よりも上の世代がファン構造の中心的世代の場合は、逆ピラミッド型になっている場合が多い。

ライブで歌ったり踊ったりする体力的年齢的限界もあるだろう。

特にアイドルの場合、アイドル自身の親世代のファン層を持つ人は少なくない。

高年齢層のファンは、経済的にゆとりがあり、歌手の売り上げに大きく貢献できる存在でもある。

ジャニーズグループやKPOPアイドルの場合は、その傾向が顕著な場合も多い。

今の第三世代韓流ブームと言われるBTSは中・高生を中心とした若い世代のファン層が主流と言われており、動画の再生回数などは非常に高い数値をあげているが、売り上げなどは第二世代と呼ばれる人達の方が安定的だったりするのは、この経済的にゆとりのある中高年層のファンをどれぐらい獲得出来ているかということに大きく左右される。

この中高年層のファンが中心的な存在である場合、歌手自身がその年代よりも20も30も下の世代だった場合は、歌手が中年期に差し掛かった時に、大きくファン層が減少、変化しているという懸念を持つ状況になりやすい。

その為、新たなファン層、若い世代のファン層の開拓は急務になる。

 

健全で安定的なファン層は、中心に非常に強固でコアなファン層を持ち、その周囲に、ライブに行くか行かないか流動的なライトなファン層があり、さらにその周囲に楽曲によってはCDを買ったりするような非常にライトなファン層を持つという三層に分かれていることが望ましい。

この第二、第三のライトなファン層というのは、何かのきっかけで、コアなファン層や第二のライトなファン層に移る可能性がある層になる。

 

最近では、CDの売り上げが減少しており、デジタル音源で、気に入った曲だけを購入する、またはサブスクで月額を払って、いろいろなアーティストの曲をチョイスして聴くという傾向が顕著であり、CD自体の売り上げをあげることが非常に難しくなっている。

その為、CDに特典をつけて売り出すということが主流になっており、コアなファン層をターゲットにした複数枚、大量購入を促す手法が取られることが多い。

しかし、これは一時的、目先の売り上げには繋がっても、長期的に安定的なファン層の形成には繋がりにくい一面を持つ。即ち、必ず何か特典をつけなければ、売り上げを挙げられないという現象をもたらし兼ねず、購買層が限定的になるという欠点を持つ。

 

楽曲は広く多くの人間に認知されることが重要であり、歌手のポジションを安定的にする。

CDの売り上げだけでなく、老若男女、様々な世代のファン層を持つことが、長く安定的な活動に繋がり、ひいては安定的な収益に繋がっていく。

一発屋のホームランではなく、安定的にヒットを量産することが、歌手のファン層形成には非常に重要なことになるのだ。

 

長く好きな歌手に活動をしてもらいたいと思うなら、自分より若い世代の人達に楽曲を勧めることから始めればいい。

そうすれば、若い世代のファン層を作っていくことに繋がるだろう。

 

新曲のプロモーション活動もコアなファン層をターゲットにするのではなく、広く多くの人に認知されることを念頭に置くことが肝要だ。

コアなファン層は、言い方は悪いが放っておいても必ずついてくる。

重要なのは、流動的なライトなファン層をどれぐらい形成できるかということだ。

ここが働きかけによって、本物のファンになっていくからである。

高齢化に伴ってファンが減少する世代がある場合は、その分、新しく若い世代のファン層を取り込むことが重要であり、そうやってファン層が新陳代謝を繰り返している場合、歌手は安定的に活動を続けていけるのである。

 

 

日本の人口は逆ピラミッド型であり、それがそのままファン社会の構図になる人は非常に多い。

若くライトで流動的なファンをどれぐらい獲得できるかが、安定的な歌手活動には不可欠な要素になると考える。