リクエストを頂いて森内寛樹の歌を聴いた。
森進一、森昌子夫妻の三男で、ワンオクのTakaの弟という予備知識を持って聴いた彼の歌声は私の予想を見事に裏切った。
それは私が想像していた歌声や歌い方とは全く違っていたからである。
ワンオクのTakaの歌声は非常にエネルギッシュであり、ストレートな甘い歌声を持っている。
それに対し、森内寛樹の歌声は、少しハスキーがかった混濁のある響きの細い歌声を持っている。
正直、ここまで兄弟で歌声で異なるとは思わなかった。
遺伝的に身体的に声帯という肉体の器官を考えてみても非常に面白いと思った。
声帯は、肉体の器官であることから、両親の影響を避けて通ることは出来ない。
森進一、森昌子という稀代の歌手二人を両親に持つ息子二人は、遺伝学的に考えても、両親それぞれの肉体的特徴を受け継いでいることは明らかであり、声帯という肉体器官の特徴は当然受け継いでいると考えられる。また、親子だけでなく、その遺伝的要素は、兄弟間でも非常に酷似することが多い。
よく電話などで話すと、兄弟姉妹でそっくりの声を聞かされ混同する経験を持ったことのある人は少なくないはずだ。それぐらい、親子、兄弟姉妹間では、「声」は酷似することが多い。
これは骨格、筋肉の特徴をそのまま親子、兄弟姉妹間で受け継ぐからである。
だから、Takaの弟と聞いて、当然、彼と同じような歌声を予想していた。
しかし、彼の歌声は全く違ったのである。
Takaが母親の森昌子の伸びやかで素直な歌声を継承したのに対し、彼の歌声は父親の森進一のハスキーで擦れたような混濁のある歌声を継承したのだ。
非常に面白いと思った。
そして、そこにこそ、森内寛樹が、一歩も二歩も先んじた兄との存在感に対抗できるオリジナル性を持つ歌手であるということの証明であり、独自の存在感を放てる要因だったのだとわかった。
それぐらい彼の歌声は、見事に予想を裏切ったのだ。
独特の歌声は、非常に魅力的でもある。
一見、女性の歌声と聴き紛うほど、ハスキーなハイトーンは、父親の森進一の歌声が女性的だったということをあらためて感じさせるものでもある。
全体の歌声は鼻腔に響いており、ハスキーさよりは細い甘さが顕著だ。
この歌声はアルバムにも収録されている「夜を駆ける」など最近の傾向であるボカロ曲をベースにした楽曲にはよく似合う。
また一方で「やさしさに溢れるように」のようなバラード気味の歌にも独自性を発揮する。
彼の強さは、これだけの偉大な歌手達の家系の中で、怯むことなく独自性を発揮していることである。
それは彼の中で自分の持ち味をしっかり肯定できる自己肯定感の現れであり、その部分が彼のカバー曲の一つ一つにオリジナル性を堂々と発揮できる強さであると感じた。
ちょっと丁寧にアルバムを聴いてみたいと思う。