YOASOBIの「ハルジオン」を聴いた。
この曲も非常に特徴的だ。
先ず、メロディーラインの固定化。
ある一定の音域の間で高速で上下する。
この特徴的なメロディーを歌うには、発声ポジションを固定化し、ビブラートは一切必要としない。
さらに後半でさらに半音上がっていく構成も特徴的である。
またもう一つ、特徴的なのは、この高速のメロディーの細かな音符全てに言葉がつけられている事であり、言葉のタンギングのエッジを深く切り込んだ発音によって、言葉が浮き上がってくるというものだ。
これらの特徴的なことから、この曲もボーカロイドのソフトを使って原案は作られた曲なのではないかと推察出来る。
もしくは、ボーカロイドプロデューサーのAyaseの作る音楽には、十分、その影響を受けていると考えられる。
これらの音楽を表現するのに、ボーカルのikuraの声は非常に適していると言える。
それは彼女の歌声に一切ビブラートがないこと、また、直線な響きでありながら、非常に細く繊細な音色で、正確に音の質感を伝える歌声であること。どちらかといえば、機械的な歌声に近いものがあり、そこに叙情的なものを感じることが少ない歌声であることなど、高速の音階を歌うのに適した歌声であることが、YOASOBIの特徴的な音楽の世界を表現しているのに適しているのだろう。
ボーカロイドは、YAMAHAが開発した音楽ソフトで、歌詞とメロディーを打ち込むと、合成された歌声に変換されて来るというものだが、これだと、どのようにでも音階を作ることが出来る。
明らかにYOASOBIの「夜に駆ける」やこの「ハルジオン」に現れているメロディーラインは、既存のR&Bやロック、バラードとも違い、独自の路線を辿る。そして、この高速ラインが最近のJPOPの一つの傾向とも言える。
林檎やきゃりーぱみゅぱみゅ、さらにはパフュームをプロデュースしている中田ヤスタカから始まるテクノポップなどからの新しい流れの中にボーカロイド音楽をプロデュースしているクリエイター達が作る新しい音楽がある。
これらの音楽の特徴を表現するのに、歌手は軽く明るい音色であくまでも機械的に歌うことが求められる。
テクノポップのように明らかに加工した歌声でない場合、正確な音程、正確なリズム、抑揚によって左右されないタテ刻みのリズム感などが強く求められ、それらを実現することによって、この音楽の特徴ある世界が表現できる。
ボーカロイド音楽の流れを組むこれらの音楽は、今後、さらに増えていくと思われる。
そういうものをどれだけ取り入れて歌っていけるか、というのも、歌手の今後の新しい戦略の一つかもしれない。