昨夜NHKで放送された「玉置浩二ショー」を観た。

そこには、玉置浩二ほどの歌手でも、「音楽をやめようかな、やめてもいいかな」と思ったというほど、

コロナ禍が歌手の心を蝕んでいる姿があった。

 

「『一』度『止』まって振り返ると『正』しいという字になる」

 

よく師匠に言われたという、

この言葉が、彼をもう一度、音楽の世界に引き戻した。

 

「音楽のリスタート」

「歌と音楽は愛」

「やっぱり音楽が入るといいなと思う」

 

彼が発したこれらの言葉は、多くの歌手も同じ思いだったはずだ。

 

この半年、コロナ禍の中で、エンタメ業界は完全に活動を停止したと言っていいほどの打撃を受けた。

 

多くの歌手が、

自分にとっての「音楽」は何なのか、「歌」は何なのかを

あらためて考えたはずだ。

 

「もう音楽をやめてもいいかな」と思った。

そこまで突き詰めて

玉置浩二は帰ってきた。

24年ぶりの紅白は、そうやって帰ってきた奇跡の歌声だったのだ。

 

 

玉置浩二の歌声は、この日も絶好調だった。

語るように歌う色彩のない歌声と、ハッキリ意思を持った濃厚な色彩の歌声。

この2つの色彩が玉置浩二の歌の世界だ。

どんなに小さな囁くような歌声でも、歌詞のテロップを観なくても言葉が空中に描き出されていく。

これが見事であり、彼のタンギングのテクニックの鋭さを現している。

多くの曲が、彼自身の作詞・作曲であるなら、また盟友松井五郎とのコラボなら、

その言葉は、彼の身体の中で見事に消化され、身体の一部となって体現される。

彼が日本語の歌詞の処理能力に優れているのは、緩急のない日本語に見事にリズムを与えて処理するからに他ならない。

彼が完全に歌詞の世界を消化し切っている現れでもある。

 

「こっからしか歌えない歌もある」

 

彼が音楽の世界に戻ってきてくれて良かった。

もっと、もっと見せて欲しいものがある。

 

多くの歌手の道標として

歌手玉置浩二の存在がある。

 

 

これからもずっと

玉置浩二の歌に浸りたい。