私がよく読むブログに興味深い記事が載っていた。

富士山マリーの日記 https://ameblo.jp/maryfujiyama/entry-12570230469.html

モヤるのは自然現象だった!ハピ・モヤ・アンチを科学分析

https://kpop55.com/happymoyaanti/

 

ここで書かれているのは、ファン活動期の移り変わりについてである。

ファン活には、ハピ期、モヤ期、アンチ期という3つの期間があり、PEAという、人間の脳内神経物質であるフェニルエチルアミンという物質が大きく関係している、という説を人間の恋愛論『愛はなぜ終わるのか 結婚・不倫・離婚の自然史』 ヘレン・E. フィッシャー)に関連づけ、分析している記事で非常に興味深かった。

即ち、ファンがスターに抱く感情は異性同士の恋愛感情に似ているというものである。

確かにアイドルとファンの関係は疑似恋愛に等しい。だからアイドルは恋愛はご法度であり結婚もままならない。

 

しかし、アイドルも人間であり、いずれは誰かと結婚する可能性は高い。長く歌手人生を続けていく中では、この恋愛、結婚というセレモニーは避けて通れない。また歌手として人間的成長を遂げていく中に恋愛や結婚というセレモニーは大きく影響を与える。

ビジュアル系のアイドルであればあるだけ、このアイドルという枠組みからアーティストへの転換が難しいことは言うまでもない。そしてアーティストへ上手く転換できることが「長く歌い続けること」に繋がっていくのは間違いないことでもある。

 

歌手が活動を続けていくにはファンの存在は不可欠である。

このファン層の構造がどのようになっているかが、その歌手の活動のキーポイントになると感じる。

 

富士山さんの記事にあるようにファンになるのにはPEAという脳内物質が大きく作用する。このPEAという物質が大量に放出されているハピ期のファンが多くいる間は安定したアイドル活動が出来る。しかし、やがてPEA物質が減少し、ハピ期の終わりがやってくるファンもいる。そうなれば、夫婦でいうところの倦怠期になり、やがてそれでもズルズルとファン活を続けるか離婚を迎えるかのどちらかに分かれていく現象が起きてくるのは避けられないことでもある。

そう考えると長く安定的な歌手活動を続けていくには、もちろん本人の努力も必要であるが、それとは別にファンが命運を握っている部分があるということになる。即ち、ファンの気持ちが歌手生命の維持に大きく作用するということになる。

 

私は歌手が長く安定した活動を続けていくには、ファンの新陳代謝が欠かせないと感じている。

即ち、パピ期のファンを核としたコアなファン層を中心に持ち、さらにその周囲にライトなファン層を持つ。この二重構造が歌手の活動を安定的にすると思う。

アイドルは強大でコアなファン層を持つ人が多いが、その場合、恋愛、結婚という人生のセレモニーを迎えた時に、ファン層は非常に脆いものとなりやすい。

福山雅治ファンのようにロス症候群になり、そのまま離れてしまうファンも少なくない。アイドルに対して疑似恋愛の感情を持つファンが多ければ多いほど、ファン層の不安定要素が大きくなる。それゆえにコアなファン層が大きい構造の場合、非常に安定しているのと裏腹に何かあれば崩壊する危険性を孕む。

それに対して、コアなファン層の数はそれほどではなくとも、ライトで流動的ファン層を周囲に持つ場合、人生のセレモニーがあってもそれほどの影響を受けない。これが実は安定した歌手活動には必要不可欠な構造ではないかと感じる。

 

ライトなファン層というのは、一見流動的で当てにならない層のように見える。しかし、このライトなファン層は歌手自身に魅力がある限り、付かず離れずの距離感を保ちつつ、ファンを継続する。即ち、それほど情報も追わなければコンサートに出かけることもない。しかし、いい曲があればCDを購入し、たまにはライブにも行ったりもする。アイドルのプライベートな話題にも寛容であり、歌さえ良ければ大方の変化は受け入れられる。このライトなファン層がどれだけいるかが実はその歌手の社会的認知度に繋がっているとも言える。

誰もが知っている歌手には、このライトなファン層が必ず大勢いる。そしてそのライトなファン層の広がりがその歌手の社会的認知度の広がりに直結しているのは言うまでもない。年齢、男女の区別を問わず、国民的歌手と言われる人達は必ずこの層を持つ。さらにこの層は常に新陳代謝を繰り返している。

この新陳代謝を繰り返すファン層の存在が歌手の安定的活動には欠かせない。

 

例えば氷川きよしは昨年、大きく自身の歌手としてのイメージを変化させた。

演歌界のプリンスとして登場した彼には元々非常にコアで熱狂的なファン層がついている。彼女達の層が中心となって歌手氷川きよしの活動を20年間支え続けてきた。そのファン層は彼の年齢と共に高齢化しているのは否めない。また、このコアな層は、彼が演歌というジャンルの若手歌手として登場したアイドル的存在であった頃からのファンでもある。確かに年齢層が高く、彼の直接の恋愛や結婚というセレモニーには動じない世代でもある。しかし彼が昨年取った戦略は、演歌歌手というジャンルを脱却しアーティストとして変貌していく道を選んだのだ。

今までの優等生的演歌歌手、または王子様的イメージから、ビジュアル系ロック、ビジュアル系JPOP歌手への変貌である。

演歌は歌手氷川きよしのコンテンツの一つになり、それが全てではなくなった。

この変貌ぶりには、今まで彼を支え続けたコアなファン層の全てがついていけたとは言い切れない。

「離れるファンがいても仕方がない。それでも自分がやりたい音楽をする」という覚悟を持っての路線変更と言える。

しかし、この変貌は、一方で新たなファン層を確実に獲得している。そこには演歌歌手としてのポジションを築き上げ、社会的に広い認知度を持った彼が持つライトな広いファン層、またファン層とも言えない予備軍の存在が大きい。

「氷川きよし」という名前を言えば年代を問わず多くの認知度を誇る彼だからこそ、変貌ぶりが話題となり新しいファン層を獲得していける。そこには今までファンではなくとも、少なからず好感を持って彼の歌を聴いてきたライトなファン層の存在が大きい。

「限界突破✖️サバイバー」での変貌ぶりで彼のファンになった人は多い。

それは歌手がいいコンテンツと出会えば多くのファンを獲得できる可能性があることを示す。その下地にあるのはライトな流動的ファン層であり予備軍と考えられる。それらの存在が新しい彼の姿に共感、または興味を持ち、その中からコアなファン層へと発展していく。

これが20年、演歌界のプリンスとして君臨し続けた氷川きよしの強みだったと思われる。

演歌歌手として一部のファン層を失ったとしても新しいジャンルのファン層を獲得することで、ファンの新陳代謝が行われていく。これが出来るのは、彼のファン社会がコアなファン層とライトなファン層の二重構造を持っていたからに他ならない。この二重構造が確立出来ているファン社会を持つ歌手は長く歌い続けることができる。

 

アイドルが長く歌い続けるにはアーティストへの転換が不可欠でもある。

アイドルとしてデビューしても本格的アーティストへの転換欲求が出てくるのは自然な流れかもしれない。またアイドルとしてデビューしても実は最初からアーティスト希望だったということもある。そして、アイドルがアーティストへの転換を図れば、そこにはファン自体もアイドルからアーティストへの転換が必要になる。

アーティストであれば恋愛や結婚というプライベートな問題に直面してもファン層自体の存在に影響することは少ない。そうなる為にはコアなファン層の周囲に常に流動的なライトなファン層を持っていることが必要である。即ち、PEAによるハピ期のファン層とPEA減少によるモヤ期を含めたライトなファン層、またファンとも言えないファン予備軍を持つことが安定的歌手活動の上で必要不可欠な要素となる。

このファン構造が上手く行かず、どちらかに偏った場合、歌手自信が長く歌い続けたいと思っても難しくなることもある。即ち、人気が下がり、CDが売れなくなり、ライブの動員数が減る。そうなれば歌手活動自体の存続が危うくなる。

これはアイドル的要素、ハピ期のファン層が多い人ほど陥りやすい現象である。そうなれば歌手生命そのものにも影響を及ぼしかねない。だからアイドルは結婚、恋愛がご法度になるのである。

 

歌手として長く歌い続けられるかどうかの命運はファンが握っているという一面を持つかもしれない。

それほど歌手にとってファンの存在は不可欠であり、ファンがいるから歌手として存在出来るということにもなる。

 

ハピ期のファンをモヤ期からアンチ期へと変貌させない為には、歌手は常にファン層という畑に水をやり肥料をやって耕し、やさしい愛情をかけて育て続けなければならない。常に自分の畑の作物に栄養を与え続けることが大切である。

そうすれば、例え水が変わっても肥料の内容が変わっても、ファンという大きな作物は育ち続けるのである。

それを怠り、いきなり新しい水や肥料をやっても、作物は枯れてしまうだけだろう。また畑を耕し続けなければ、水をやらなければ、せっかく育っていた作物も枯れてしまう。そうやってモヤ期からアンチ期へと変貌していくのである。

 

富士山さんの記事を読みながら、熱烈なファンがアンチになっていく過程の心理がわかったような気がした。嫌いになれば無関心になればよく、アンチに変わっていく心理がわからなかった。でも彼女の記事を読むとよくわかる。

これは東方神起ファンだけに限らず、誰のファン社会にでも起こり得る現象と言える。例えば、元メンバーのジェジュンの場合も、現在の彼のファン層は強固なハピ期のファン層によって支えられている部分が多いが、ライトで流動的なファン層の広がりが彼の日本での社会的認知度の広がりには不可欠である。その転換が上手く行かなければ、東方神起のファン層のようになる可能性がゼロとは言えない。ファン層の広がりと新陳代謝は長く歌い続けていくアーティストには重要な課題であり、40代、50代と歌い続けている歌手は必ずそのファン層を持っている。

 

歌手の命運をある意味ファンが握っている構図は、ファンの存在が如何に大きいものであるかということの証でもあるように思えた。

 

彼女の記事を読みながら、アイドルと呼ばれる人達が長く生き残っていく独特の日本のファン社会の一片を考えてみた。