アップテンポの楽曲の上を言葉が乗って行く。
リズムから零れ落ちる事なく、テンポに遅れることなく、どんなに速いリズムの刻みの上にも言葉は明確に載せられて行く。

見事だ。
見事としか言いようがない。
言葉は決して横に流れない。
どんなに速いテンポであっても言葉は非常に明確で何を言っているのか、言葉は自然に耳の中に入ってくる。
それはエッジを深く切って発音しているというより、軽く自然で、彼の滑舌の良さを証明しているようにも思える。
彼のリズム感はどんな速いリズムの中でも言葉を処理して行くことができる。
それは、リズムそのものが彼の中に刻み込まれていて、身体のすべての器官がそれに反応するように思われる。

ピアノの速いパッセージは、正確にリズムを刻み、音の粒となってどこまでも並んでいく。
それと同じように彼の歌声もまるで鍵盤の上を転がって行くように音の粒が整然と正確に並んでいく。

この手の音楽を歌いこなせる歌手は、今の日本では彼以外、おそらく見当たらない。

一見、聞き流してしまうほどの明るくアップテンポな楽曲は、彼のテクニックのレベルの高さが凝縮されている。

お見事だった。