「……急激に歌えなくなっていくのでは」という心配のコメントを頂いて、今回の歌声を注意深く聴いてみた。
彼が歌のフレーズの中で頻繁に入れるブレスからの懸念の声だったが、確かにそれは当たっている。

今回の歌を聴いて、先ず感じたのは、声が前に出ていない、前に当たっていないということだった。
これは、先に歌った「Sweetest Love」の歌唱でも感じた。ハンドマイクの不自由さだけでなく全体に声の当たりが悪く前に通らない、飛ばない、という歌っている彼自身のジレンマを感じた。
そう、彼自身が一番わかっていると思う。
先月の「ベストアーティスト2019」に出演した時にも感じたことだったが、あの時はコンディションが最悪だった理由が明確にあり、本人も呟いている。致し方ないことであり、最悪のコンディションの中で彼がベストを尽くそうとしているのもわかった。あの時の歌は全体に声が前に出ていない、当たっていない。その自覚の元、高音部を発声するのに彼には珍しく力で押す形になっていた。よほど声帯のコンディションが悪いんだと感じる歌だった。

歌手は大きく二つのタイプに分かれると思う。
一つは声帯が元来丈夫でブレスの流れなど気にしなくてもある程度の音量が出る。発声のポジションを考えなくても声帯が丈夫なために力で押していけるタイプ。これは元来の声帯が分厚く、力で押して歌う人に多い。少々、声帯のコンディションが悪くても力で押して声帯をくっつけることで声を出すことが出来る。声帯が丈夫なためにそのような発声をしても喉を痛めることが比較的少ない。声のタイプで言えば、ストレートボイスの人に多い。このタイプは時間帯に関係なく声を出すことが出来る。例えば早朝であってもある程度の歌声を出すことが出来る。
これに対し声帯が薄く丈夫でないタイプがいる。このタイプは発声ポジションをきちんと取らないと声帯がうまくくっつかない。くっつかないと声が前に飛ばない。声の響きが前に当たらない。力で押してくっつけて歌っていると声帯に障害を抱えやすい。そのためにきちんとブリージング(呼吸法)を使って歌わなければ歌えない。声のタイプで言えば、ビブラートを持つタイプの人に多い。どちらかと言えばスロースターターなタイプが多く、歌いこんで行くに従って声が出てくるタイプ。早朝などの時間帯は声が起きていない(声が出ない)ことが多い。

ジェジュンは後者のタイプだと私は思う。それゆえ、彼にとっては声帯を含む身体のコンディションが歌声に大きく影響する。いい時の彼の歌声は声が全部前に出てポジションに響きが綺麗に当たっている。しかし、悪いコンディションの場合は響きが当たらない。こもった声になる。前に声が飛ばない為にボリューム不足になる。これらは全て声帯の反応に関係する。即ち、彼の場合、コンディションをどのように保つかは重要なことだと感じる。
特に彼は日本活動を再開してから歌声を変えている。意識的に高音部を使うことと全体的にソフトボイスの色調が強く、発声ポジション的にはヘッドボイスに近い。そのため、声帯の反応が如実に歌声に現れやすくなっている。即ち、その日、その日で歌の状態が変わりやすいということに繋がる。これを彼自身がどの程度自覚しているかはわからない。

ウルトラSUPERLIVEでの彼のコンディションは良かったとは言えない。先日のFNS歌謡祭の方が良かった。これは楽曲にもよるかもしれない。「チキンライス」は中音域が多用されていて、彼にとっては発声ポジションを取りやすい。声帯が元来持つ声域に近いからだ。
「未来予想図II」は音域が高く、それだけに声帯のコンディションの状態によって歌が影響を受けやすい。
11月、12月と彼は多忙を極めていた。日本と韓国だけでなく、アルゼンチンまで出かけている。単に肉体的な疲労だけでなく、急激な寒暖の差は声帯に影響を及ぼしやすい。
以前にも書いたと思うが、声帯の乾燥が歌声に大きく影響する。声帯が乾燥すると反応が悪くなり、伸縮が悪くなるからだ。伸縮が悪くなるということは、高音部、低音部の音が出にくくなるということになる。
声帯の乾燥を引き起こす原因は、喫煙、飲酒、疲労だ。さらに日本の冬は空気が乾燥している。歌を歌わない人でも朝起きた時に喉の痛みを感じる経験をしたことがあるだろう。就寝中に乾燥した空気が入り込み、喉を乾燥させるからだ。声帯は粘膜だから乾燥を嫌う。だから日本の冬は歌手にとっては厄介な季節でもある。マスクをしているのは、声帯を乾燥させない為でもある。

歌手ジェジュンとしては、ベストなコンディションの中で歌うことが最も重要なことだと感じる。
彼が今後、歌手として大きく花開く為には、歌手業以外の仕事をどこまでコントロールできるかにかかっている。
それが歌手としての寿命にも直結すると私は感じる。

今日は「レコード大賞」明日は「CATV年越しプレミアムライブ」に出演する。
彼の歌声のコンディションと、どのような歌になるのかを注視したい。