ジェジュンのカバーアルバムの中の収録曲である「未来予想図II」が配信され、Mステで披露された。

この曲に関しては、ドリカムの中村氏がブログに二度に渡ってブログに非常に好意的なコメントをしていることからも分かる通り、評価が高い。

今さら、私のようなものが書くものでもないと思いながらも、私なりの視点から彼の歌を分析してみようと思う。

 

最初に配信音源を聴いたときに思ったことは、「ずいぶん、エネルギッシュな曲に仕上げた」ということだった。

彼はこの曲を過去にNHKの「Covers」でも歌っている。その時の歌声と音源の歌声を聴き比べてみた。一番感じたのは、配信の歌声はサビ以外の部分ではウィスパーボイスを多用しているということだった。

 

ウィスパーボイスは、ジェジュンの歌声の特徴の一つだ。彼の場合、ブレス音を意識的に使う。

普通、歌は、極力、ブレス音がしないように歌うことを求められる。しかし、彼の場合、グループ時代の頃からブレス音を意識的に使うことが特徴だった。その頃に比べると最近はブレス音を多用していると感じることが多い。

この曲でも、冒頭からサビまでの部分に於いて、殆どのフレーズの始まりにブレス音が存在する。これはブレスする度に自然に入るというよりは、意識的に入れていると考えられる。なぜならサビの部分や最後のアレンジの部分ではブレス音が皆無だからだ。それはエネルギッシュな歌声を出すのにブレスを全て歌声に変換させているからに他ならない。

 

彼の歌声は日本活動を再開してから変化している。

この変化が意識的にしていることなのか、それとも無意識に行われているものなのかはわからない。ただ言えることは、以前、日本活動していた頃の歌声に比べて線が細くなったということだ。以前の歌声はもう少し幅があった。

確かに日本人好みの歌声にカスタマイズしていく中で、元々の歌声よりは細くカスタマイズされていた。しかしもっと幅があり鼻腔に響く甘い濃厚な歌声だった。それに比べると最近の彼の歌声には、幅と甘い響きが以前より少なくなり、細く優しい歌声が勝っている。これが、この曲や「愛燦燦」などのカバー曲の歌声の特徴と言える。声が細くなった分、ブレス音が目立つようになった。

この変化の要因の一つには彼の歌う音域の変化がある。グループ時代の彼の担当音域は高音域であっても今より明らかに低い。元々彼の歌声は、ハイバリトンであり、中音域から低音域が綺麗に響いていた。これが4オクターブ半の音域を支える大きな要素だった。

ソロ歌手の活動の中でも、韓国時代はここまでのハイトーンボイスの歌はなかった。しかし日本活動を再開してからの彼の楽曲はどれも非常に高音域のメロディーラインで構成されている。それは、中・低音域が殆ど出てこないことが多い。

 

声帯は高音域を発声する時には、薄く上下に伸びる。それに対して低音域を発声する時には短く分厚くなる。

高音域ばかり歌っていると、メロディーラインが低音域になっても声帯の反応は高音域のままになる。そのため細い響きのままで中・低音域を歌うことになる。

この曲の場合、僅かに中・低音域が連続で出て来るフレーズが一箇所だけある。それはBメロの「私を降ろした後、角を曲がるまで見送ると、いつも」までの部分。また2番も同様に「二人でバイクのメット、5回ぶつけてたあの合図、サイン」までの部分に彼の元々の甘い響きの中・低音域が顔を覗かせる。しかし、これ以外の部分では、彼のこれらの音色を聴くことは出来ない。そして細い響きの歌声のまま、サビの部分へとエネルギッシュに突入していく。そのためにヘッドボイスの割合が多くなり、エネルギッシュだがソフトな歌声となる。

これが彼の最近の歌声の特徴だと感じる。その為、ストレートボイスの歌手とコラボした場合は、歌声が掻き消されてしまう恐れがないとは言えない。それぐらい彼の歌声はソフトな音色になっていると感じる。

今回のMステに於いてもその特徴は顕著で、1番のみでエネルギッシュに展開していく後半のサビの部分は披露されなかった為、ソフトなウィスパーボイスの歌声という印象になる。

 

しかし、この特徴はライブなどで長時間歌う場合には変わって来る。

長時間歌うライブに於いては、ソフトなウィスパーボイスの歌声よりも元々の持ち声である幅の太い歌声で歌っている印象を持つ。よほど彼が意識的に作ってない限り、歌声は太めのミックスボイスとヘッドボイスになる。これは長時間歌う間に、声帯の反応はどうしても本来の形に戻ろうとするからであり、彼自身もその方が安定した発声が出来るという理由に依るものだと思う。

何れにしても、私は彼本来の甘い響きの中・低音域の歌が聴きたいと思う。カバーアルバムの他の曲の歌声がどのようになっているのか非常に興味深い。

 

そして、彼の歌声の変化の理由は声そのものの変化の他に実はもう一つある。

それについては、また別の機会に書いてみたいと思う。