• 毎年、お誕生日イベントとして行われるJJパーティーだが、今年はイベントというよりは、Liveという要素が大きいものだった。

ステージにはバンドとジェジュンだけ。

時勢柄もあるのだろうが、MCもなく、彼一人の歌とコメントで進められるステージは、まさにソロコンサートそのものの様相だったと言っていい。

冒頭と最後のコーナーがライブで、真ん中にファンとのコミュニケーションのコーナーが設けられるという、実にシンプルな構成だった。

彼の歌に飢えているのはファンだけではない。

彼自身が歌声に飢えている。

ことあるごとにインタビューで、「ライブがしたい」「コンサートがしたい」と言うほど、彼自身が音楽に、歌に飢えていた。

そんな中でやっと実現したイベントは、絶好の機会だったと言える。

この日のセトリは、

アンコールも入れて、以下の13曲。

構成は、彼自身も話すように、バラードで全編覆われていた。

 

前半

1.We’re

2.また会うけど、また会うだろうけど

3.僕だけの癒し

4.脆くて弱い愛を

5.소녀 少女

6.抱きしめて

7.僕たちが愛さなければならないものたち

 

後半

8. Now Is Good

9.明日は雨

10. Heaven

11.海の時間

12. Just Another Girl

アンコール

13.守ってあげる

 

このセトリと全体的な感想としては、

ファンとしては、久しぶりに彼の歌声を聴けて満足。

やはり「歌を歌う人」

そしてバラードが似合う歌声。

ファンとしては丸ごとOKである。

 

しかし、予め記事にも書いたが、音楽評論家としては、やはり全てOK!と言うわけにはいかない。

それでもこの2年余り、コロナ禍で日本に戻って来れない期間に行われたどのオンラインコンサートよりも今回は良かったと言える。

それは非常に歌声が充実していたからに他ならない。

 

彼の歌声を聴いて、12年になるが、この間、彼は非常に歌手として成長した部分と、変わらない部分を持っている。

変わったところは、声の音質。

これについては、折に触れて何度も書いてきた。

そして、変わらないのは、

歌う前の緊張感と、エンジンのかかりが遅いところだ。

この2つは、もう昔から変わらない。

緊張する、というのは、彼自身がいろいろな場所で発言している。

そして、この前半のエンジンのかかりが遅いところは、彼自身がどこまで自覚しているかはわからない。

この12年、何度もコンサートに出かけたが、歌い始めから数曲は、非常に声のあたりが悪い。響きが上手く鼻に当たっていない状態の声が多く、全体的に響いていない、という印象の歌声になる。そして、中盤以降から後半になるに従って、尻上がりに充実した歌声になる、というのが彼の特徴でもある。

もちろん、他の歌手もそういうことは大いにあるだろう。誰しもコンサートの始まりは緊張感でいっぱいになるし、何曲か歌って身体や声帯が温まってくると、もっといい声が出てくるのはありがちなことだ。

それゆえ、多くの歌手は、ステージ前のリハーサルをかなり入念にやる。

ジェジュンもソロ活動に専念し始めて4年。

最初の頃よりも入念にリハーサルを行っているし、以前のようにリハーサルで歌いすぎて本番で声が疲れて出にくかったなどというコントロール不足もなくなった。

そういう点ですっかりソロ歌手としてのセルフコントロール力は身につけ始めている、と言える。

しかし、今回のコンサートの前半曲に於いては、エンジンのかかりが遅かったのか、それとも新曲が多く、自分のものに完全に消化できていなかったのか、または、それ以外の理由でか、声の響きの当たりも伸びも明らかに後半の方が良かった。

考えられる原因の一つに、選曲がある。

今回、初めてカバーした『소녀 少女』を筆頭とした数曲(『抱きしめて』『僕たちが愛さなければならないものたち』)に関しては、かなり音域が低めのフレーズが多く、決して彼にあっている音域とは言えない。

彼の歌声の持ち味は、やはり中声区から高音域にかけての伸びのある濃厚な響きの歌声にある。

確かに低音域も、ハイトーンボイスの歌手には珍しく響きが抜けてしまわないし、ソフトで太めの響きをしている。

これは彼が言う「元々の彼の持ち声」であり、高音域になるに従って、「綺麗な細めの作った歌声」が現れるのが特徴でもある。それゆえ、低音域はチェストボイスの地声で歌い、中・高音域はミックスボイスの歌声になるのが特徴的である。

そういう意味から考えると、前半曲は、特にメロディーラインが低めなのも多かったと言えるかもしれない。

全体的に彼の歌声のエンジンがかかりにくく、高音域や中音域になっても、響きが抜けていかないのを感じた。

 

これに対して、トークコーナーを経ての後半は見違えるように良くなった。

特に良かったのは、後半2曲目『明日は雨(Tomorrow Rain)』

この曲は、人前で歌うのは初めて、とのことだったと思うが、「難しかった」と彼が言うほど、低音域から高音域までの幅の広いメロディーラインで、特にサビの部分は、低音から一気に高音のロングボイスが要求される作りになっており、非常に歌声のコントロールが難しい曲でもある。

この曲を彼はフルコーラスで歌ったが、特に2番の歌声は素晴らしかった。

非常に伸びのある高音で、彼の持ち味である艶のある綺麗な響きの美声がロングボイスで鳴り渡り、久しぶりに彼の伸びやかな美声を聴いたと思うほどだった。

後半1曲目の『Now Is Good』から、前半とは全く違った声量と響きが戻っており、トークコーナーで、十分に精神的にもリラックスし、さらに話すことで声帯の反応が良くなったことによる効果が現れていた。

 

『海の時間(Time Of Sea)』は、彼の歌声の変化を最も感じられる1曲である。

この曲を最初にラスト・オンサートで聴いた時、絵具で書かれた水彩画から、濃厚な油絵へと変わる絵画のイメージを感じたが、それは、まさに彼の歌声の響きの変化が絵具の濃淡の変化のように感じたからで、冒頭からの歌声は、非常にブレスの混じった透明的な歌声に対し、後半のサビになるに従って、濃厚な響きが現れてくる。

まさにMVの通りのイメージの歌声で歌われた楽曲という印象だが、この日の歌声もまさにその色彩の変化を感じさせるものだった。

彼が「好きな曲」と言うだけあって、非常に丁寧に大切に歌われているという印象を持った。

 

最終曲の『Just Another Girl』の冒頭のアレンジは全く変わっていて、アコースティックな始まりだったのは非常に印象に残った。

この楽曲をこのようにアレンジして新しい解釈で歌うのもなかなか新鮮だと感じさせる。

 

 

いずれにしても、前半のスロースターターな彼の癖は変わらないが、ドラマ撮影の日程の中で、非常によく歌い込んできた、という印象を持った。

彼が数少ない貴重な機会を大切に捉えて、自分の歌を届けようとしている情熱が伝わる良いコンサートだった。

 

コロナ禍の中、なかなかLIVEが難しいが、会場の観客がきちんと感染対策を守って、一切掛け声もなく、拍手で応援している姿は、非常に素晴らしいと感じた。

今年もなかなかLiveが難しい状況ではあるが、日本で彼のコンサートが開かれた折には、感染マナーを守って、彼や主催者に迷惑のかからないようにしながら、Liveを楽しみたいと思う。