たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。

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今回は、J-POP界の中で異彩を放つロックバンドKing Gnuを扱います。King Gnuは、知っている方も多いと思いますが、キングヌーと読みます。数年前に彼らが初めてテレビの音楽番組に出演した際のことは、今でも私の記憶に残っていて、レベルの高い音楽を放つ集団という印象を受けたものでした。その後も彼らの音楽には、独特の世界観があると感じます。バンドの成り立ちのインタビューなどから、彼らの作り出す音楽の世界や、その世界を描き出す井口と常田の歌声の魅力について書いてみたいと思います。

常田と井口、出会うべくして出会った二人

King Gnuは、2017年に結成された4人組のバンドです。メンバーは、常田大希、井口理、勢喜(せき)遊、新井和輝。

前身は、常田が2015年に結成したSrv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)で、このバンドは、バンドというよりは、あくまでも常田のソロ活動をサポートするという意味合いが強いものでした。そのため、メンバーもその時その時に常田が声をかけて参加してもらうという流動的なものだったようです。

常田は、長野県伊那市の出身で、ピアノ好きの父親と音楽教師の母親という環境のもとに育ち、早くから音楽に触れていました。高校卒業後、東京藝術大学音楽学部器楽科に進み、チェロを専攻します。

しかし、社会や文化と結びついた音楽がやりたい、という理由から1年で中退。その後は、独自の音楽活動を繰り返しながら、活動形態がバンドとしての要素が強くなったことから、現在のメンバーが固定した2017年にKing Gnuとして活動を始めました。

井口もまた長野県伊那市出身。実は常田と井口は小中学時代の幼馴染で、中学では同じ合唱部に所属していたようですが、特段仲がよかったというわけではなかったそうです。

高校時代は一旦疎遠になり、その後、井口が東京藝大音楽学部声楽科に進学。その頃、大学を中退していた常田は、その後も大学に何かと出入りしていたことから再会を果たします。

これが、のちにKing Gnuを立ち上げていく大きな要因になったと思われます。

井口は、4人兄弟の末っ子で、次兄は声楽家の井口達。中学時代は合唱部にいたのですから、早くから音楽に触れ、歌うことが好きな少年だったことが窺えます。

藝大では、もちろんクラシック音楽を勉強していましたが、在学中からクラシック一筋ではなく、ミュージカルや舞台などにも出演したようです。常田と再会した彼は、最初、Srv.Vinciのバックコーラスメンバーとして参加したようですが、その後、ボーカルを主に担当するようになります。(

勢喜遊と新井和輝と常田は、六本木のバー「Electrik神社」のイベントで知り合い、その後、2人が常田のバンドに合流して、メンバーが固定化し、King Gnuとして2017年に活動を開始しました。

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4人それぞれが、考えやこだわりを持つ

 

続きはこちらからKing Gnu『4つの音が主張し合う新しい音楽の形』(前編)人生を変えるJ-POP[第39回]|青春オンライン (note.com)