米津玄師の最新曲『地球儀』のMVを観た。
常々、思うことだが、彼の作り出す音楽の世界は突出した強さを持っている。
『Lemon』にしても『感電』にしても、非常にインパクトのある始まりで、曲の冒頭から、グイグイ、リスナー達を自分の世界へ引っ張っていく。
それは、彼が得意とする音楽の作りだったり、MVの世界だったり。
今回のこの曲は、宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』の主題歌でもあり、米津にとっては100曲目の作品ということ。
この人の音楽の世界には、一切の誤魔化しがない。
決して音楽から逃げない。
自分の感性から生まれ出てくる音楽を真正面から堂々と綴っていく。
そんな潔さをどの楽曲にも感じる。
その楽曲の印象を作っているアイテムの1つに彼の歌声がある。
彼の歌声は、透明感が強い。
この曲での歌声は、高音部が中心になっているが、中音域も低音域もどの音域にも響きに混濁はなく、澄み切っている。
真っ直ぐに伸びていく。
一直線に伸びていく歌声という印象だ。
また、フレーズの歌い方や音程の取り方も直線的で、どこにも曲線を感じさせるものはない。
普通、このように直線的に音程を取って歌うと、音楽がプツプツと切れがちになり、聴いている人間の耳に違和感を覚える。
しかし、この人の場合、その声の透明感と相まって、直線的な音程の取り方や歌い方が、かえって爽やかであり耳に心地良い。
さらに、今回の曲もそうだが、比較的、彼の作る楽曲は、ゆったりとしたリズムで流れていくものが多く、言葉がリスナーの脳内に届いて、言葉を文字に変換するのに十分な時間が与えられる。
すなわち、リスナーは、彼の歌う言葉を十分、文字に変換して、追うことが可能なのである。
その時間を彼の歌声は、透明な響きを奏でて、音を繋いでいるのである。
彼の作り出す音楽の世界、また、音楽そのものを評価されることが多いが、私は彼の楽曲を支える歌声こそが、その世界観を作り出していると感じる。
彼の楽曲には、歌手米津玄師の歌声が不可欠なのであり、あの透明感と響きの深さ、直線的で爽やかな世界観は、彼の歌声があって初めて作り出せる世界と感じる。
彼の楽曲がドラマのテーマソングに使われるとき、その歌声の透明感が、ドラマの場面や主人公の心情にそっと寄り添い、絶妙のタイミングで響いてくる。
今回の映画を私はまだ拝見していないが、きっと映画でも彼の歌声はそっと主人公に寄り添ってくるだろう。それはまじりっ気なしの真っ直ぐリスナーの心に響いてくる魅力的なストレートボイスだ。
歌手米津玄師は、そんな歌声を持つ歌手なのである。
※米津玄師の音楽と魅力について、青春出版社で連載中の『人生を変えるJ-POP』に書いています。
読まれてない方は、以下からどうぞ。
米津玄師『音楽と共に時代を駆け抜けていくメッセンジャー』
https://note.com/seishun_pub/n/nf682510c3f39?magazine_key=m4836940fe976