大阪城ホールで開催された「Seiko Matsuda Concert Tour 2023『Parade』」を拝見した。
今回は、彼女のヒット曲を中心にセトリが組まれており、コロナ禍で禁止だった「声出し」も解禁されて、大いに会場が盛り上がった。
彼女自身のピアノ演奏で『Rock’n Rouge』で始まり、『秘密の花園』『渚のバルコニー』などお馴染みのヒット曲が続く。
『時間の国のアリス』『天国のキッス』『チェリーブラッサム2021』などヒット曲が目白押しだ。
こうやって序盤をしっかり盛り上げた後は、『あなたに逢いたくて』でしっとりと歌いあげ、恒例のアコースティックコーナーへとファンを誘う。
いつも思うことだが、このアコースティックコーナーの後に行われたリクエストコーナー。
ここで、彼女が如何にファンとの触れ合いを大切にしているかがよくわかる。
コロナ禍の去年、トークやりとりが出来ない中で、ファンの手書きボードに掲げられたリクエスト曲を片っ端からワンフレーズずつアカペラで歌っていくというコーナーがあった。
これを今年も行ったのだ。
このコーナーでの彼女の記憶力はすざまじいものがある。
43年、93枚のアルバムに収録された曲は1135曲。
このすざまじい数の楽曲の中から、一体何がリクエストされてくるのかわからない。
ボードに書かれたタイトルを見ただけで、ワンフレーズ、時にはサビ全部を歌える彼女の記憶力は、舌を巻く以外に表現のしようがない。
このコーナーを見るだけでも、彼女のライブに来た甲斐があったと感じる人はたくさんいるだろう。
今年の彼女の歌声は、非常に伸びが良く、絶好調と言える。
松田聖子の歌声は、まっすぐに空間をどこまでも伸びていく歌声だ。
単なるストレートボイスというものではなく、響きが真っ直ぐに伸びていく。
これは、彼女だけが持っている唯一の響きであり、加齢と共に音域が低くなっても、その響きの伸びと美しさは変わらない。
若い頃は高音の伸びが魅力だったが、中年になってからは、低音のアルトの響きに魅力が増した。
特に今年は、低音だけでなく、高音の伸びも素晴らしい。
彼女が、ライブに備えて、しっかり身体を作り、声を鍛え上げてきたのがわかる。
後半はヒット曲メドレー。
ステージの端や中央の階段を軽々と駆け上がり、ステージの端から端まで軽やかに走り回る彼女は、何年経っても、その容姿と共にスーパーアイドルだ。
「いつの間にか43年も歌い続けて、61歳になりました。こんなに長く歌わせて頂けたのは、本当にみなさんのおかげです」と深々の頭を下げるその姿は、毎年、本当に美しい立ち居振る舞いになる。
この丁寧なお辞儀こそ、彼女が、いつまでも愛され続けるアイドルの証拠だ。
声出し解禁の今年は、『夏の扉』で「聖子!」の掛け声が会場に響き渡っていた。
今年も夏の扉は、松田聖子が開けた。
来年も彼女と共に扉を開けに行こう。