手越祐也の1stアルバム『NEW FRONTIER』の後半曲のレビューです。
7.ONE LIFE
スローバラード曲。
ピアノの伴奏で始まる印象的な冒頭部分から、透明感のある歌声で歌が始まる。
語りの軽い響きの歌声で言葉を丁寧に紡いでいく。
また語尾まで大切に言葉を一つ一つメロディーの上に載せていく歌い方をしているのが印象的である。
手越の中音域は、声質で言えば女性のアルトの音色に近い音色を持っている部分があるが、この楽曲にはその歌声の音色で中心的に展開されている。
サビのフレーズから後半にかけてメロディーがロングヴォイスで歌われるに従い、エネルギッシュでパワフルに歌い上げていく。
「This is my LIFE, My only one LIFE〜」
スローテンポで展開されるこの楽曲では
真っ直ぐに素直に伸びていく響きに、彼の音楽に対するスタンスが表れている楽曲でもある。
彼はこの楽曲に自分の決意を込めたと語っているが、それを感じさせる一曲である。
最後のフレーズ「少年の青い空へ」の
「あ お い そ ら へ」は、一文字一文字を丁寧に音のラインに載せていくことで、彼の思いを歌に託して届けている。
8.Snow White
快活でロマンティックなメロディーである。
自然と口ずさみたくなるような軽いリズミカルな音楽が展開されていく。
クリスマスソングというだけであって、明るく楽しく歌いたくなるような雰囲気の楽曲である。
この楽曲を彼は軽くテンポ良く歌い進めていく。
明るく少し鼻にかかった甘い色調の音色の歌声で明瞭な言葉が歌い綴られていく。
自然と一緒に歩いていきたくなるような楽曲であり、ライブでみんなで合唱できる楽曲にしたかった、という彼の気持ちが溢れた一曲である。
9.ウインク
コケティッシュな曲調の楽曲。
ハロウィンに合わせ軽妙な色調のポップな楽曲を歌う彼の歌声は、これも少しコケティッシュな色調だ。
鼻にかかった甘い歌声を駆使していて、顔の前面に声を集めて歌うことで発声ポジションを固定している。
甘い中音域に対して、この楽曲の高音部は濃厚な響きの色調を保ったまま、ヘッドボイスで歌い飛ばしていく。
彼の濃厚な響きが存分に使われている一曲。
10. HONEYYY
ダニエル・パウターに依頼した楽曲というだけあって、都会的なセンスに溢れたスマートなR&B。
彼はファンの子を“HONEYYY”と呼んでいるとのことで、「ファンがカッコいいと思うような楽曲にしたかった」という主旨のことを話している。
R&Bのリズムの洗練された音楽が全体的に流れている。
彼の歌声も縦型の響きにすることで大人の色調の歌声になっている。
普段の歌声よりも、意識的に扁平的な明るい色調を封印し、口を縦型に開き、響きをそのまま縦型に鼻に抜いて大人びた響きの歌声を作り出すことで、この楽曲の都会的な曲調に合わせている。
11.LOVE SENSATION
冒頭からエネルギッシュでパワフルな歌声の楽曲。
この楽曲では全体的にどの音域もシャウト気味な歌声になっている。
またブレス音を意識的に入れてフレーズの語尾に使うことで、音楽を前へ前へと進めていく雰囲気を作り出していく。
リズミカルでアップテンポの音楽に彼の歌声もノリノリで歌い綴られていく。
コントロールされた高音から低音までの切り替えの安定感や、アップテンポの中でも言葉が明瞭なのは、さすがとしか言いようがない。
サビの部分のフレーズの後半に使われているファルセットからのヘッドボイスは、非常に綺麗な響きを披露している。
次々、これでもか、これでもかと歌い綴っていく後半は、声の重なりによる音の洪水になっている楽曲。
12.モガケ!
明るい色調に未来を感じさせる楽曲である。
彼の歌声も明るく前向きであり、元気になる歌声である。
ミックスボイスとヘッドボイスの転換はスムーズで非常に安定している。
彼の持ち味である歌声の特徴である明るい色調や、濃厚な響きが堪能できる一曲である。
アルバムのタイトルである「NEW FRONTIER」という言葉が印象的である。
この楽曲を歌う彼の歌声からは、どんな困難にも「前へ前へ」という決意が感じられる。
また彼自身が非常に楽しみながら歌っている様子が、歌声に現れている楽曲である。
アルバムの最後に相応しい一曲である。
以上でアルバム全曲を簡単ですがレビューしました。
全曲を聴いての総括は、また、別記事にして出しますので、そこで彼の歌声についての詳細についても書かせて頂きます。