この一年近く彼の歌はカバー曲ばかりだった。

当然、私も彼の歌声はカバー曲を通して聴くということばかりだった。その中で感じていたのが、彼の歌唱力の高さと無理のない発声だった。

今回、彼のオリジナル曲が配信されたとのことで彼がどのような曲をデビュー曲に選んでくるかということも含めて興味深かった。

「シナモン」は、作詞小林未奈 作曲小林未奈・松本京介

楽曲は全体に非常に甘く優しい雰囲気の曲だ。

この楽曲に対して、手越の歌声はどこまでもどこまでも優しい。

今まで彼の多くのカバー曲を聴いてきたが、その中でもこれほど優しい音色に包まれた楽曲はなかったように思われる。

彼がこの曲を心から愛おしいと感じる気持ちがそのまま歌声に溢れて出ているようであり、その気持ちがこちらに伝わってくる。

 

使われている歌声はミックスボイスとヘッドボイス。

彼の歌声の中でも音色が特に明るめのものにしている。

発声のポジションを固定し、非常に軽く歌っているのが特徴的。

さらにヘッドボイスに転換される高音部へのボイスチェンジは非常にスムーズであり、かなりの高音域になっている。

全体的には、持ち声を明るめの少し細めにカスタマイズしている。

今までのカバー曲からも、彼が非常にしっかりとしたテクニックの持ち主で、どのようにも自分の持ち声をカスタマイズできるだけのテクニックを持つことが証明されてきたが、今回は、このような色彩の歌声を使ってきたのか、という印象を持った。

あくまでも軽く、明るめの歌声。

これがこの人のデビュー曲として自分で選んできた色彩ということになる。

優しさの中にも芯の強さが一本通った歌声である。

 

毎月、配信されるという楽曲と、12月に発売されるというオリジナルアルバムに、どのような彼の音楽の引き出しが開いていくのか、非常に楽しみでもある。