40th Anniversary Seiko Matsuda2020 “Romantic Studio Live” と銘打って3日夜、松田聖子自身初のオンラインライブが開催された。
歌った曲はメドレーを含む全14曲。
さすが、40年トップアイドルとして歌手として君臨し続けた人は、オンラインであろうとその存在感が身動ぎもしない、ということを見せつけた。
決して気負いのない、淡々としたステージ運びは、彼女の歌手としての自信と貫禄を感じさせた。
音楽にかける集中力が素晴らしかった。
観客がいてもいなくても、彼女は音楽に集中する。
そこには彼女と音楽とが存在しているだけだ。
約1時間のパフォーマンスは、ずっと椅子に座ったままのコンサート。
派手な演出もセットも何もない。
バンドの真ん中に置かれた椅子に座り、スポットライトを当てただけの演出。
歌姫の演出にはそれで十分だ。
歌で勝負する。
40年、彼女が貫き通したスタンスがここにも現われている。
アイドルとしてもてはやされ、時代の流れに乗った彼女だが、根底にあるのは揺るぎない歌声と音楽性。
この芯がしっかりしていたからこそ、40年という長い時間を経ても彼女はトップに君臨し続けれるのだ。
丁寧に一曲一曲を歌い紡いでいく。
彼女の静かなステージ運びには、自分の曲に対する長年の愛情と、それを支え続けてくれたファンへの愛情と感謝に溢れていた。
丁寧に「ありがとうございます」と頭を下げる彼女の静かな挨拶には、長い時間を共に過ごしてきたファンへの気遣いが見え、熱狂的なファンがアイドルからアーティストへ変換していく彼女を支え続けたということがわかる。
アイドルからアーティストへの転換は簡単ではない。
誰もがアーティストになることを夢見る。
しかし、アイドルとしてもてはやされた経験のある人が、そのポジションから実力主義のアーティストの世界に転向できるのは、ほんの僅かの数しかいない。
そこに裏打ちされるのは、歌手としての歌唱力と、オリジナルの音楽性。
この2つの柱がしっかりしていなければ、実力主義の世界で生き残っていくことは出来ない。
歌声は彼女の特徴である透明性の高い音色を保っていた。
ウィスパーボイス気味の無機質な色合いの透明性の高い音質は、伸びを保っている。
この音色が松田聖子の命綱だ。
58歳という年齢は、声帯が熟年化して、分厚くなり、中年特有の濁りのある音色が出てくる年代でもあるが、彼女の音色には一切それを感じさせない。
40周年を記念して書き下ろされたという自作の歌詞に財津和夫が曲をつけた新曲「風に向かう一輪の花」は、彼女の特徴であるウィスパーボイス気味のミックスボイスから、ファルセットの変換が非常にスムーズに行われる曲で、珍しく彼女の綺麗な高音が聴ける一曲になっている。
ファルセットでも彼女の透明性のある音色は変わらない。
この音質が多くの人の耳を捉えて離さない最大の魅力だ。
彼女初のオンラインライブは、オーディエンスがいないだけで普段のライブと何ら変わることのないものだった。
終始、彼女のペースで進められたライブは、彼女が如何に音楽に集中出来る人なのかということをあらためて示した。
私は去年、一昨年と彼女のライブを観に行った。
その度に、彼女の揺るぎないアイドルとして、アーティストとして君臨し続ける姿に圧倒された。
また来年、コンサートに行きたいと思う。
「私の歌の世界の主人公は年を取らない。いつまでもデビューの頃の気持ちと一緒です」
そういう彼女の魔法にかかりに行くために。
人は日常を忘れるためにライブに出かける。
その魔法を彼女は私達にかけ続けるのだ。
いつまでも10代の少女の気持ちで。
※参考
歌った曲は以下の曲。
①小麦色のマーメイド②瞳はダイヤモンド③セイシェルの夕陽④赤い靴のバレリーナ⑤瑠璃色の地球2020⑥SWEET MEMORY
⑦メドレー 野ばらのエチュード、秘密の花園、LaLa!!明日に向かって、モッキンバード、天国のキッス
⑧風に向かう一輪の花(新曲)⑨赤いスイートピー⑩あなたに逢いたくて