難しい歌だと思った。でも、いい歌だと思った。
楽曲としてのメロディー進行が平坦で高低の少ない音程が続く。それに続く展開部、さらに半音上がって繰り返されていくサビのメロディーが印象的だ。中毒的に短いフレーズで繰り返されるサビのメロディーは覚えやすい。
久しぶりに二人の歌を聴いた。
音楽番組の特番などで昨年、何度か見かけたが、きちんと聴いたことはなかった。分裂後の彼らはKPOP系のダンスナンバーが主流だったからだ。
娘がずっとユノのファンだったこともあって二人の動向は知ってはいたが、楽曲をきちんと聴いたことはなかった。娘がファンを辞めてからは楽曲のタイトルすら知らなかった。だからなのか、久しぶりに聴いたこの曲の第一印象は非常に難しい歌だと感じた。
彼らがこの10年、どんなバラード曲を歌ってきたか私は知らない。しかし、この曲を聴く限り、二人のハーモニーは成立していると感じた。
冒頭のユノの歌声とそれに続くチャンミンの歌声の音色が統一されている。ちょうど二人にとってはボイスチェンジのある音域でファルセットとミックスボイスの切り替えのコントロールが難しい音域にメロディーラインが並ぶ。その部分を彼らは慎重に声をコントロールしている。
印象的なのは非常に言葉が丁寧に歌われていることだ。
バラードの身上は言葉の明確さにある。一つ一つの言葉を丁寧に歌い繋いでいくことによって聴く人の心に届く。この曲もゆっくりとしたテンポ感の中で、繰り返されるサビのメロディーに載せられた言葉が丁寧に紡がれていく。
二人の声の特徴は、5人時代に聴いていた頃の声と全く変わらない。
二人ともストレートボイスでビブラートを持たない。また音色はそれほど多くない。
分裂時、思ったのは、音色の似通っている二人でハーモニーを作ることの難しさだった。
二人とも押し出しの良い張りのある声ではない。一見、チャンミンの声は張りのあるように聞こえるが、それは高音部を歌う時にブレスを声帯に垂直に当てる癖があるせいであって、元々持っている声が鳴りの良い声ではない。その為、音色の似通った二人で作るハーモニーは非常に難しいのではないかと思った。
昨年、歌番組で何度か見かけた彼らの曲はどれもダンスナンバーでKPOPの特徴を押し出した印象が強かった。縦刻みのリズムに合わせた歌声は、どれも断定的で縦のラインが強調されており、ダンスに合わせた鋭角に刻む音色だった。
この曲も決して横に流れるメロディーではない。
バラードと言えば横に流れるメロディーラインとたっぷりとした音量の朗々とした歌声が特徴的になるが、この曲はそういうものとは一線を画し、縦刻みの音の羅列から始まる。
サビの部分も声を張り上げて歌う作りにはなっておらず、言葉を丁寧に繋いでいくメロディー展開になっている。あくまでも歌声をコントロールした中で歌い上げていく手法がとられており、歌い手にとってサビを歌う感情の高揚感をストレートに表現出来ないもどかしさを抱えながら、抑えた感情表現が求められる。
そういう点で非常に難しい歌だと思った。
しかし彼ら二人には合っている。
彼らの特徴を知り尽くした楽曲の作りであり、さすがに15年、彼らをプロデュースしてきただけのことはあると感じた。
そして思ったのは、やはり今もエイベックスは彼らに歌唱指導の人間をつけているのだろうということ。
きちんとプロデュースされた中で作り上げられた楽曲、という印象を持った。
デビューして17年。二人になって10年。
難しい時期に入ったと感じる。
今後、彼らがどのようにプロデュースされていくのか興味深い。
追記
アメブロに紹介するのに、ミュージックビデオを観た。
なんだか懐かしい映像があった。
彼らが確かに「東方神起」を守り続けてきたのだと思った。