バロックダンスは、フランス王ルイ14世が君臨した17世紀バロック時代の貴族社会において発展したものである。
ベルサイユ宮殿で毎夜、催される舞踏会。厳格なしきたりに沿ったものだが、それとは別に気のあった貴婦人同士でサロン風舞踏会も頻繁に催されていた。そういう場合には、お茶会の合間に軽くダンスをしたりする。
正式な舞踏会とはまた別にそれらのリハーサルのような気楽な気持ちで当時の貴婦人達はダンスに勤しんだ。
そんなダンスを集め、チェンバロやバロック・バイオリンなどの古典楽器の演奏や歌と共にコンサートが催された。
そのコンサートを鑑賞した。

正直、バロックダンスを観たのは初めてのことだった。
貴婦人達の踊りと言えば、ドレスの裾を持って、おしとやかにお辞儀をして男性と一緒に優雅に踊る。
そういうイメージを持っていた私からは、この日の踊りは意外なものだったと言える。

細かく刻まれるステップ。
両足のポジションを微妙に変えながら、ステップを踏んでいく。
細かな足元の動きに対して、上体の動きはそれほど大きくない。
両手をしなやかに上下左右に動かす以外には、背筋はピンとの伸びており、上体が大きくブレることはない。
あくまでも上体はしなやかに、足元だけが軽く細かなステップを刻んでいく。

バロック音楽は、オペラなどでも楽曲の中に使われていたり、室内楽があったりで、私にとってはそれほど耳珍しいものでもないと言えるが、
チェンバロほか、バロック・バイオリンやヴィオラ・ダ・ガンバなど、全てが古典楽器で演奏されるバロック音楽は初めてだったかもしれない。この3つの楽器にリコーダーを加えた4つの楽器の音のバランスが素晴らしく、ダンスをしっかり支えているのが印象的だった。

日頃、クラシックバレエを観ることはあっても、その基礎ともなるバロックダンスを観れたことは、貴重な体験だった。