NHK「うたコン」に出たジェジュンの「未来予想図II」を聴いた。
この曲を聴くのは何度目だろうと思った。
一番最初に聴いたのは、NHK「The Covers」での歌だった。まだアルバムが出る前だったが、ドリカムの中村氏が褒めちぎるように、充実した素晴らしい演奏だった。
その時のレビューはアメブロの方に書いている。

ジェジュンVocalReview「未来予想図II」(The Coversより)

それから、彼はコンサートの追加公演で歌い、結局、カバーアルバムに入った。しかし、アルバムの歌声とそれまでに聴いた歌声との印象は大きく違った。なぜなら、彼が使用する歌声の種類が明らかに違っていたからだ。
「The Covers」やコンサートでは、充実した響きの歌声で歌われていたのに対し、アルバムの歌声はハイトーンボイスの非常に線の細いハスキーな歌声だった。その歌声は「First Love」でも使われているもので、余りにも細くハスキーな部分が強調される為、声帯そのものが痩せてしまったような懸念を抱かせるものでもあった。また、アルバム発売後のMステでの歌唱では、同じように響きの細い歌声であったのに対し、CDTVでの歌唱では充実した歌声であり、その違いの要因の一つとして生中継と録画での緊張感の影響を正直なところ感じたのは確かなことだった。

しかし、今日の彼の歌は、非常に良かった。
久しぶりに充実した歌声を聴いた。
冒頭から、どの音域も充実した濃厚で綺麗な響きの歌声を披露していた。
音楽の流れも非常に落ち着いていて、クライマックスへと進んでいくブレスの切り替えもスムーズにされていたと思う。
この曲に関して、やっと歌い込めた、という印象を持った。

彼は「練習は一切しない。活動が練習だから」というような主旨の発言をしているが、それこそが、彼の歌の状態がその時々で変わる要因なのではないかと感じる。
彼は昔からスロースターターで、歌い込むほどに声が出てくるタイプだ。
コンサートに於いても、前半よりは明らかに後半の方が充実した歌声になる。
これは彼以外のコンサートに出かけて聴いてみると誰しもありがちな状況でもある。
しかし彼の場合、その影響は小さくない。
韓国時代の8年間、ほとんど歌えなかった環境の中では明らかに歌手として歌い込み不足であり、歌唱力のベースになる基礎力の部分で大きく他の歌手とは異なる。
もちろん、他の歌手でも普段練習をしない歌手はたくさんいる。しかし、一年中、ほとんどコンサートや歌番組で歌っている彼らは、いつも声帯が臨戦体制であり、いつでもベストの状態で声を保っている人が多い。
それに比べて、韓国時代の歌い込み不足に加え、韓国に戻れば歌わない生活が待っている彼とでは明らかに声の充実度は変わってくる。そんな状態でも彼が一定のレベルを保っているのは抜群の集中力があるからだ。恐らく彼の中では、かつての経験から、本番が練習であり、集中する事で自分の歌声を客観的に判断する能力と改善する能力を身につけていると考えられる。
「活動が練習」ということは、一つ一つの本番そのものが練習であり、本番を積み重ねることで、その歌は歌い込まれていくということを示している。
そういう事から考えると、今夜の歌を聞く限り、やっと彼は歌い込みができて、どんな状況でも自分の歌として提供することができるレベルになったのだと感じた。

これはファンの人はどのように感じるかわからないが歌手活動を続けていく上で大切なポイントと言える。
活動の主軸をどこに置くのか、歌手なのか俳優なのか、日本なのか韓国なのか。
これが今後も彼の歌手生命に与える影響は小さくない。
声帯は歌わなければ退化する。
それは筋肉だからだ。そして長く歌い続けるためには自己管理は不可欠な要素だ。喫煙や飲酒が声帯に与える影響は小さくない。
先日、聴きにいった徳永英明も過去にポリーブを患っている。歌手の場合、「歌う」という行為そのものが声帯を酷使するものであり、多くの歌手が中年期に声帯を患い、その後、非常にストイックに自己管理をする事から、若い頃から、声帯へのリスクは極力避けるに越したことはないと感じる。
そういうことも含めて、彼が今後、どのように歌い続けることができるか、非常に興味深い。