たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。
今回扱うのは、透明感溢れる歌声で多くの人を魅了する女性シンガーUruです。彼女は個人に関する情報が全て非公開になっているため、ここでは、デビューから現在までの活躍と「奇跡の歌声」と呼ばれる彼女の歌声の魅力について書いていきたいと思います。
(前編はこちら)
その印象的な動画に心惹かれて
2016年にメジャーデビューをし、その歌声で多くのリスナーを魅了し続けるUruですが、私自身が彼女の存在を知ったのは2018年頃のことでした。
すでに彼女はメジャーデビューを果たした後ですが、私のようにクラシックの世界で長年生きてきたような人間では、新しい人達の歌声を知るきっかけは、それほど多くありません。
2018年と言えば、私自身はJ-POPのアーティストの評論記事を本格的に書き始めた頃でした。たまたま、中島みゆきの『糸』の聴き比べ検証の記事を作っていたときに、さまざまな有名なアーティストの動画と共に上がってきたのが、彼女の歌った『糸』の動画でした。
モノクロの画面に半分しか映らない顔。背景には、白い壁と植木鉢や蝋燭などの軽いインテリア。そんな空間の中、彼女の細く透き通った声が響いていきます。何の飾りもなく、ただ歌声が響く空間。そんな印象的な動画が私の興味を惹きつけました。
それで私は彼女のチャンネルに行き、数々の動画を見たことを覚えています。『やさしさで溢れるように』(JUJU)『奏(かなで)』(スキマスイッチ)『First Love』(宇多田ヒカル)などのような楽曲に混じって『Wherever you are』(ONE OK ROCK)や『粉雪』(レミオロメン)さらには『メロディー』(玉置浩二)など、あらゆるジャンルの楽曲をカバーしていました。
これらの楽曲を彼女は、ピアノの伴奏だけで歌っていきます。そのため、彼女の歌声が前面にクローズアップされるものとなり、彼女の歌の実力がそのまま反映される作りになっているのです。
そのモノクロの世界観と彼女の歌声が非常に印象的で、私の中にはUruという名前と彼女の存在が強く残りました。
音質鑑定からわかった特徴とは
「奇跡の歌声」と呼ばれる彼女の歌声ですが、私が得意とする声の分析から、彼女の歌声を音質鑑定すると以下のような特徴が浮かび上がってきます。
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全体的に澄んだ響き。
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透明性の高い音質でその特徴は低音域から高音域まで変化しない。
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声の幅は細くもなく太くもない、中ぐらいの幅を持つ。
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ビブラートはほとんどなく、ストレートの響きをしている。
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響きに混濁はなく、それはファルセットになっても変わらない。
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声の中心に芯のある響きを持ち、散らばっておらず、1点に集中している。
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真っ直ぐの響きで、響きがフラフラと揺らぐことはない。
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低音域から高音域まで使える幅広い音域を持っている。特に中音域のアルトの中性的な音質は非常に魅力的。
10年前といまを比較してみると…
続きはこちらからUru『神様からのギフト、奇跡の歌声』(後編)人生を変えるJ-POP[第36回]|青春オンライン (note.com)