たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。

画像

今回は、韓国出身の歌手ジェジュン(J-JUN)を取り上げます。

彼は、東方神起のメンバーでした。筆者にとって、この連載の主旨でもある「たった1人のアーティスト、たった1つの曲に出会うことで人生が変わる」という、まさに久道の人生を変えた出会いのアーティストです。
彼の人物像や日本活動を行うことになった経緯、また韓国人でありながらJ-POPを好んで歌う音楽の世界観などを評論的立場から掘り下げていきたいと思います。

歌手を目指して─それは苦しい練習生から始まった

ジェジュン(韓国名キム・ジェジュン、日本ではJ-JUNでも表記される)は、1986年生まれの36歳です。

韓国忠清南道公州市出身。家族は両親と姉が8人の大家族です。その頃、韓国ではJ-POP のリメイクを歌う歌手が多く、彼もその影響を受けて育ったと言います。

小さい頃の夢は「スーパーの店長になること」でしたが、中学3年のとき、クラスメイトに見せられたX JAPANのポスターに衝撃を受け、2番目の夢である歌手を目指すようになりました。

当時、SMエンターテインメントが行っていたオーディションを受けるも落選。高校進学後、歌手を目指すために中退し、単身でソウルに上京。考試院(コシウォン)と呼ばれる簡易宿泊所(家賃1万円程度の生活困窮者のための宿泊所)で寝泊まりしながら、SMエンターテインメントの練習生に合格後も建設現場や皿洗いなどありとあらゆる仕事をして生計を立てていました。

生活するのに仕事に明け暮れる日々で、(コシウォンの家賃が払えず映画のエキストラをしたというエピソードも)、満足にレッスンに通うことができなかった彼は、あやうく練習生を外されそうになりますが、たまたま彼の歌を耳にしたイ・スマン社長によって、東方神起のメンバーに選出されました。

この頃のことを彼は「夢を果たすためにソウルに出てきたのに、日々、食べていくことで精一杯だった」と話しています。

東方神起でデビュー、そして脱退…いばらの道は続く

 

続きはこちらから

ジェジュン『J-POPの世界を描き出す2つの歌声の持ち主』(前編)人生を変えるJ-POP[第16回]|青春オンライン (note.com)