藤井風が先日公開した『まつり』を聴いた。

うーん、こうきたか、と思った。

なぜなら、今までの楽曲と完全に趣きを変えてきたからだ。

 

元々彼の魅力は、年齢にそぐわない大人の落ち着いた雰囲気だ。

その最たるものが歌声。

彼の歌声の特徴は幅のあるバリトン。響きに幅があり、幅を構成しているビブラートに様々な色合いがあるのが最大の魅力だ。

全体的には非常に落ち着いた色合いの音で、耳に心地よい。だから老若男女、どの世代にも抵抗なく受け入れられる。

昨年まではエネルギッシュでダイナミックな音程の移動による楽曲が多かった為、彼の歌声も低音域から高音域までの移動が激しく、ゆったりとした作りの中音域を味わえる楽曲といえば、『帰ろう』ぐらいだったかもしれない。

しかし、今回の『まつり』は、彼の中音域の歌声の魅力が十分に聴ける。

全体に少しピッチを下から潜るように取ってくる歌い方になっている。

これが歌声の下方の響きを作り上げている。即ち、響きの中心が低めに設定されているのだ。

そしてブルース。

完全に楽曲はブルースの体を成している。

和楽器を使っているというのも、もちろんタイトルの『まつり』からなのだが、「まつり」といえば、人々の記憶にあるのは、エネルギッシュでパワフルなイメージ。

今まで作られてきた楽曲も北島三郎の『まつり』に代表されるように、ハイトーンがベースのパワフルで縦に進む賑やかな音楽という印象が強い。

そのイメージを彼は完全に塗り替えてきた。

ブルースでグルービーで横に動いていく音楽。

ミドルトーンの落ち着いた色合いの中に動きのある世界を表現してきた。

昨年までの楽曲のイメージを脱却した彼の音楽、という印象を持った。

 

また、新しい彼の引き出しが開いたのだ。

それが非常に意外で面白かった。

藤井風の引き出しは、これから何が開いてくるのだろう。

そう思うと気持ちがなんだかウキウキした。

今年は彼の生歌が聴きたい。