たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。
今回は、日本人の父親と韓国人の母親を持つラッパー、ちゃんみなを扱います。彼女は、高校生でデビューをした経歴の持ち主で、独特の音楽のセンスを持つ人です。彼女がデビューしてきた経緯や、その後のグローバルな活躍など、「練馬のビヨンセ」と呼ばれる彼女の魅力について書いていきたいと思います。
(前編はこちらから)
歌声の強さと種類の豊富さが最大の魅力
ラッパーというと、どうしてもラップのイメージから、歌声というものの印象が薄くなりがちなのですが、ちゃんみなの魅力は、歌声の強さと種類の豊富さにあります。
彼女の歌声を私が得意とする音質鑑定してみると、下記のようになります。
ラップ音楽になじみのない人でも受け入れられる声の秘密
ザッとこのような音質の特徴を持ちます。彼女の歌声は、高校生でデビューした頃から、既に濃厚な成熟した響きを持っていたのが特徴です。
普通、この年代では、男女共に透明感のある音質をしていることが多いのですが、彼女の場合は、既に成熟した響きを奏でています。
これが、高校生という年代でも、ラップの言葉が浅くならない理由だったのではないかと感じるのです。声の響きが濃厚だと、言葉1つ1つが立ちやすく、音楽の流れに埋もれないので、それだけ人の耳に残りやすいと言えるでしょう。
ラップは、「言葉が命」ですから、1つひとつの言葉が明確に立ち上がっていく声の響きは特に重要です。
また、彼女の場合、フリースタイルのラップではなく、音源ラップであるため、そこには明確なメロディーや音源が存在します。
ラッパーの場合、ラップ部分とボーカル部分の声の繋ぎが非常に重要なのですが、よくありがちなのは、いわゆるラップ(喋り)とボーカル(歌)部分との声に差異があることです。
今までラップ部分では、強く明確な声で喋っていたものが、ボーカル部分になった途端にボリュームがダウンして、全く違う声になる人がいます。
こうなると、ラップ部分とボーカル部分に明確な差が生まれて、音楽の流れが分断され、ラップ部分とボーカル部分が全く別の切り離されたような印象を持つことがあります。
これが、ラップ音楽が万人に受け入れられにくい要因だったりするのですが、彼女の場合は、このラップ部分とボーカル部分の声の差異がほとんど感じられません。
ラップ部分も流れるようにメロディックで、そのメロディックな喋りのまま、ボーカル部分に入っていくので、非常に音楽の流れがスムーズです。
これが、彼女のラップが多くの人に受け入れられている理由の1つではないかと感じます。
即ち、ラップ音楽に馴染みの少ない人の耳にも違和感なく彼女の声が入ってくるのです。これは、彼女が持つ大きな魅力の1つですね。
3か国語を使いこなせるからこそ
続きはこちらからちゃんみな『日本と韓国、世界を音楽の力強いメッセージで繋いでいくトリリンガルラッパー』(後編)人生を変えるJ-POP[第45回]|青春オンライン (note.com)