たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。

画像

J-POP界には多くの優れたアーティストがいますが、絶対数で言うと男性アーティストの方が圧倒的に多い状態です。その中で存在感を示す女性アーティストの1人にJUJUがいます。今回は今年デビュー20周年を迎えた「JUJU」、デビューからファンに支持される「ジュジュ苑」という独特のイベント、さらには多くのファンの涙を誘ったというMVの世界など、数少ない本格派女性アーティストである彼女ならでは魅力に迫りたいと思います。

前編はこちらから)

『奇跡を望むなら…』で、高音部の響きが変わった

後編では、JUJUの歌声の魅力に迫りたいと思います。

今回、改めて彼女の歌声を聴き直してみて、個人的に意外だったのが、彼女の高音部。

私の中でなぜか、彼女の歌声はミドルボイスのハスキーボイス、つまり中声域の印象が強かったのですが、デビュー直後から代表曲までを聴くと、非常に綺麗な高音部の歌声を持っていることがわかり、認識をあらためました。

実は、デビュー当時の彼女は喫煙していましたが、ディレクターに「レコード会社辞めるか、タバコ止めるかにしろ」と言われて、2005年に禁煙し、「それ以降、音域が2オクターブ広がった」と話しているのです。(※)

私が彼女の歌声で高音部が意外だと感じた楽曲が『奇跡を望むなら…』。この曲が2006年ですから、既に禁煙に成功した時期と言えます。

この曲は全体的に高めの音域で構成されており、サビのメロディーでは、どんどん高音へとチェンジしていくメロディーラインになっています。

この曲で彼女は綺麗な高音部を披露しているのですが、確かに喫煙していた頃のデビュー曲『光の中へ』では、全体的にハスキーな響きの歌声が中心です。高音部もハスキーさを伴ったままの歌声で、この楽曲との違いは歴然としています。

彼女自身も「曲が売れないし、声はしゃがれてくるし、歌手に向かないんじゃないかなと思った」という主旨の発言をしていて、喫煙をやめる決心がついたのだと思います。

2年間のブランクを経ての『奇跡を望むなら…』の歌声は前2枚とは別人のように、ハスキーさの中にも芯のある響きが存在しており、綺麗な響きをしている歌声です。

喫煙が如何に歌手に影響を与えるかの良い事例かもしれません。

画像

ハスキーさが混じった透明感溢れる響きが、彼女だけの特徴

 

続きはこちらからJUJU『切なさを描ききる歌声の持ち主』(後編)人生を変えるJ-POP[第33回]|青春オンライン (note.com)