たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。

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第28回目はストリートミュージシャンの先駆け的存在であるゆずを扱います。昨年結成25周年を迎え、その前には新しいライブの形も提案し、活躍を続ける彼らの音楽の魅力とデュオによるハーモニーの魅力について分析したいと思います。

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寄り添い、背中を押してくれるような楽曲に…

ゆずの楽曲は全曲を北川と岩沢の2人が作っています。どちらかが作詞、どちらかが作曲、というような分け方ではなく、楽曲によって作詞も作曲も1人が行っていたり、2人の共作だったりします。

ゆずの音楽の魅力は、なんと言っても、耳に馴染みやすい単純なメロディー構成と日常の心模様に密着した歌詞にあります。

楽曲の構成としては、非常にオーソドックスな作りで、多くの楽曲が、Aメロ→Bメロ→サビ・Aメロ→Bメロ→サビ・Cメロ→大サビ→Dメロ、という形を取ります。

即ち、A、B、サビを2度繰り返した後にクライマックスの大サビへと入っていく、というパターンが多いのです。

このオーソドックスな作りの上に単純なメロディーが乗っていくため、非常に耳に馴染みやすく、誰もが覚えやすいのです。

また、楽曲は主に、応援、恋愛、主張、友情という4つのカテゴリーに分けられますが、歌詞の内容は、人生への応援歌とも言うべきものが多く、前向きな内容の楽曲が多いのが特徴ではないでしょうか。

歌詞に描かれている世界は、普通にどこにでもいるような人々や、どちらかと言えば劣等生に近いような気弱で情けない主人公の悩みや挫折感、さらには心の葛藤などです。

このような誰もが抱く日常の当たり前の感情を歌詞に描き出すことで、聴き手は描かれている主人公に自分を投影し親近感を覚えていくのです。

さらに自分のそばで一緒に苦しみや挫折感を共有し、そっと寄り添ってもらえるような気分になるのです。

また、彼らの描く歌詞は、必ず前に一歩、足を踏み出して歩いて行こうというものが多く、それによって自分の背中を押してもらえるような気持ちになるのが特徴と言えるでしょう。これが多くの人の心を掴むのです。

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北川さんの声が、変わった…?

 

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