10月3日に神戸国際会館で開催された氷川きよしのコンサートを拝見した。

一言で言うなら、「kinaはkina、他の誰でもない」

 

氷川きよしはこの3年で激変した。

私はたまたま初めての生ライブが彼が2019年9月6日に行った大阪フェスティバルホールでのバースデーコンサートの夜の部で、「今日から演歌歌手のカテゴリーを外します」と宣言したのを今でも覚えている。

その時、彼はさまざまなことを語った。

このライブはバースデーコンサートということもあり、42曲を網羅するライブで、前半は演歌、後半はポップスとロックというふうに、それまでの氷川きよしの歌手としての軌跡を辿るコンサートでもあった。

私は個人的には彼を好きな方だと思う。

演歌歌手だったが、彼のいわゆる演歌らしくないポップス演歌は好きだった。

何より歌声がパーンと抜けていくのが好きだった。

しかし、ファンではないから、彼の動向は知らず、NHKの歌コンでたまたま『限界突破…』を拝見して驚愕したのを覚えている。しかし、その驚きは不快なものではなく、むしろ彼がビジュアルロックを歌ったことに好感を持ったぐらいだった。だから、やはり、私は彼の演歌よりもポップスやロックの方が好きなのかもしれない。

 

今回も前半は演歌の代表曲を歌い、後半はポップスやロックだったが、衣装は完全に後半はドレス姿の女装だった。

古くからのファンはどのように感じているのかわからないが、ここまで自分を出し切ることができるようになったことは、氷川きよしという歌手にとっては良かったと思う。

なぜなら、アーティストにとって一番辛いのは「自由がないこと」だからだ。

「自由に自分を表現する」

これがアーティストであって、自分を自由に表現することが出来ない環境に置かれることほど辛いことはない。

そういう意味からも、彼が今の自分をありのままに出せるようになったことが、彼の音楽の幅を広げていることにつながっている。

 

この日、一番印象に残ったのは、アンコール後の『You are you』

この曲はポップス調で非常にノリの良い曲だ。

さらに歌詞の中身に対して全体に明るい色調の音楽で、シビアな内容の歌詞にも関わらず、軽く明るい印象を与える。

彼自身の作詞で、非常に強いメッセージ性を持ったものとなっている。

彼の気持ちを端的に著しているものの楽曲の1つと言えるだろう。

 

歌声はポリープ切除後、全体に少し痩せたという印象を持ったが、ほぼ元の状態に戻りつつある。

今年の過密スケジュールの中、ここまで声が戻ってきているのは、やはり持って生まれた声帯そのものが強いということは否めない。この強さが、彼が23年間、故障もなく突っ走ってこれた理由だと感じた。

 

この日の彼のMCは、事務所との難しい関係を吐露する場面もあった。

昨日、文春砲に出た記事の中身を暗に裏付けるものであり、背負ってきたものの重さがそのまま歌声の色に現れる歌手の1人だと言えるだろう。

 

活動休止後の復帰は、おそらく名前を変えてくる可能性は否めない。また完全にビジュアル系のアーティストになって戻ってくるのではないかと感じる。

彼の変貌ぶりには、さまざまな意見があるだろうが、kiinaはkiinaであり続ければ良い、と思った。

それが一番人間らしい生き方であり、アーティストとして自然の形だろう。

そう思った。

 

※なお有料記事『氷川きよし 新たな挑戦(『歩き続ける歌の道』を拝見して)を下記に公開しています。

この記事は評論家として、氷川さんの新たな挑戦を応援していく意味で書いたものです。

https://note.com/hisamichi0226/n/na2617cca2a01