手越祐也が7月にリリースした新曲『OVER YOU』を聴いた。

この曲はボカロイドPのマイキが楽曲を提供している。

久しぶりに彼の楽曲を聴いたが、相変わらず、日本語の歌詞の明瞭さは抜群である。

 

最近のJ-POP楽曲の傾向はいくつかに分類される。その中で高速リズムで作られているボカロイド曲を実際の歌手が歌うというジャンルは米津玄師やYOAOSBIで確立され、1つのジャンルとして定着している。

今回のこの楽曲もボカロイド作曲家でドラマーでもあるマイキが提供したとあって、高速リズムの楽曲の上を言葉の粒が並んでいく。

ボカロイド曲は音符の数が半端なく多い、これは高速リズムのメロディーラインを構成することが一つの特徴になっており、その上を多くの日本語が並んでいくことで、リズム感を崩さないように作られている。

今回の楽曲『OVER YOU』も御多分に漏れず高速メロディーだ。

その為、その世界観を伝えるには、正確なリズム感と言葉の明瞭さが求められる。これがボカロイド音楽を歌うのにテクニックを要する部分で、最近の傾向として全体に言葉数が多いのが特徴とも言える。

この世界観を手越祐也は見事に再現している。

YouTubeで数多くのカバー曲を披露しているが、私が彼を最初に知ったのもYOASOBIの『夜に駆ける』だった。

彼の歌をそれまで聴いたことのなかった私は、彼の日本語の明瞭さに舌を巻いた。

どんなに早いリズムが来ても、言葉が立っていくのである。これは見事だった。

手越祐也という歌手の大きな特徴の一つと言える。

彼がこれほどに安定して歌い上げれる要因の一つが、歌声の安定ということだ。

彼はボイトレをジャニーズ時代から欠かしたことがないと聞く。

ボイトレは非常に地道な練習分野だが、歌手としての土台の部分であり、根幹でもある。

これがしっかりしている人は、どんな楽曲が来ても、歌声がブレることはない。

彼がボカロイド曲を歌いこなし、さらに言葉が明瞭に立つのは、この基礎となる歌声が、どんな言葉やリズムにも対応できる力を持つからである。

だから、今回の彼の楽曲でも伸び伸び歌っている歌声が聴けるのである。

 

独立して2年。

彼は彼なりの歩みの仕方でアーティストとして確実に自分の世界を築き上げていると言えるだろう。

メディアへの露出が少なくても、確実にファンを増やしていく方法はある。

ネット社会が発達した現代では、芸能人にアンチや誹謗中傷はつきものだ。

それでも自分のアーティストとしての活動を核に据えて、アルバムを出し、確実に実績を積み上げていく姿は、ジャニーズ時代やその頃の彼を知らなかった人達の心に確実に届いている。

着実に今を積み重ねていくこと。

長い歌手人生の歩みは始まったばかりだ。

 

音楽は誠実に取り組む人を裏切ることはない。

手越祐也は、歌手としての本道を行けばいい。