手越祐也の12月まで毎月、配信されるという新曲の第3弾。

ダンスナンバーだ。

これを見ると、手越祐也という歌手は、本当に上手いと唸ってしまう。

それはお世辞でもなく贔屓目でもなく、おそらく音楽好きの玄人が見れば、皆、同じ評価を彼に下すだろう。

それぐらい彼の基礎力もパフォーマンス力も表現力も完成されていると感じるからだ。

アイドル出身の歌手の実力を見縊っていた、と批判されても仕方ないぐらい、高い実力を備えたものになっている。

 

彼が昨年一年、表舞台に上がらず、YouTubeというコンテンツを使って、何をしてきたのか、活動の裏側でどんなふうに過ごしてきたのか、それが7月から配信されてきた3曲に凝縮されている。

バラードあり、VOCALOIDあり、そして今回のダンスナンバーと、彼の配信する曲はどの曲もジャンルが異なり、手越祐也というアーティストのジャンルの広さを示すものになっていると言えるだろう。

 

ジャンルがこれほど異なる彼の音楽だが、その中で共通するものがある。

それは「言葉の明瞭さ」である。

彼の歌の大きな特徴の一つに、この「言葉の明瞭さ」がある。

前作の『ARE U READY』でも感じたことだが、彼の歌は、どんなにテンポアップの曲であっても、言葉が流れていかない。きちんと言葉がそこに存在しているのは、リスナーにとってストレスフリーであり、多くの世代に受け入れられやすい武器でもある。

この特徴が今回のダンスナンバーでもきちんと発揮されている。

 

さらに、今までの3曲を聴いて感じることは選曲の良さである。

今回の楽曲からは、最近のトレンドであるK-POP音楽を感じさせる。

サウンドや振り付けに於いて、J-POPのダンスナンバーというよりはK-POP感を感じさせるものになっている。

これらのジャンルを歌いこなす要因は、彼の歌手としての基礎力にあり、伸びやかな歌声やクリアな響き、さらには明確な発音など、歌唱力を発揮するのに必要な歌手としての土台がしっかりしていることを示していると言えるだろう。彼のパフォーマンスを支えるダンサーだけでなく、しっかりとした戦略のもとに、これらの楽曲が選曲されているのを感じさせるチーム戦になっていることが特徴として挙げられる。

 

アイドルグループで長く活動していれば、ソロとして活動したいという欲求は自然の成り行きとも言えるかもしれない。

多くのアイドルがグループを脱退しては、ソロ活動へと移行していく中で、グループ時代よりも輝く人間は正直限られている。その限られた人間達に共通のものは、オリジナル性と確かな実力である。

歌手としてオリジナルな世界観を構築できたものだけが生き残れる世界でもある。

そういう意味で、手越祐也は、この一年半の活動を通して、歌手としてのオリジナル性を十分発揮していると言えるだろう。

 

残り3曲。

彼がどのような曲に挑戦してくるのか、非常に興味がある。