「Kirari」はホンダのCMソングとして書き下ろされた楽曲で、まだ正式にはリリースされていない。

この曲がTVで流れているのを聞いたとき、一瞬手が止まった。

それぐらい藤井風の歌声は独特の色調を持つ。

それは他の歌声と周波数が違うからなのだろう。

 

最近のJPOPの歌手の傾向はハイトーンボイス。

これは日本人は元々、ハイトーンボイスを好む傾向が強いという統計が出ている。

それは日本の気候によるものなのかもしれない。

乾いた空気が多い日本の風土は、高音が通りやすく響きやすい。

それゆえなのか、以前から高音の歌手が好まれる傾向が強かった。

布施明、西城秀樹、井上陽水、小田和正、B’z、XJAPANなどなど、名前をあげたらキリがないほど、ハイトーン歌手のオンパレードである。

高音部をエネルギッシュに歌い上げていく。

これが多くの人の心の琴線に触れ、ヒットしていくものが多い。

即ち、ハイトーンボイスは、日本では大衆に好まれる不可欠要素の一つなのだ。

 

藤井風の歌声は、そんな傾向の中で、異なった色彩を放つ。

甘い低音から鼻にかかった中音域は、非常に刹那的怠惰。

歌声が全体に鼻腔に響く色合いのために、音楽が横へ横へ流れていく。

一本の線上に音符が並んでいく。

音の進みが怠惰で緩慢。

その緩慢さが、大きな魅力になる。

タテ刻みの音符に歌声が乗ると、音楽の進行は縦なのに、歌は横に流れていく。

その対照的な音の広がりが彼の音楽を大人の世界に仕立て上げていくのだ。

 

今のJPOP界は、ボカロイドや高速メロディーのハイトーンの色合いが強い。

その中で完全に異彩を放つ。

 

甘く怠惰で、濃厚な歌声は耳に心地よく、ハイトーンの世界から、色彩の濃い世界へと誘う。

忘れてきた何かを思い出させる音色。

 

疲れた神経に彼の歌声はちょうどいい。

ハイトーンボイスに飽きたのかもしれない。

そんなことを思った。