ジェジュンの魅力について考えてみた。
彼の甘い歌声だろうか。
それとも圧倒的なビジュアル。
日本活動を決して諦めなかった人間性。
「丸ごとジェジュンが好き」という溺愛ファンが多いのが、彼のファン社会の特徴のように感じる。
そういう強固でコアなファンに支えられて人気を誇っているが、私は彼の歌声面にフォーカスして魅力を分析してみたい。
私が彼の歌に最初に出会ったのが今から12年前。まだ彼が東方神起のメンバーだった頃だ。
私が彼のファンだったのを知っている人達には、よく知られた話だが、私は彼の歌声に惹かれた。
なぜなら、クラシック的発声をその頃、彼はしていたからだ。
よく伸びる高音と決して響きが抜けない低音、そして濃いビロードのような色彩の魅力的な中音域を持っていた。
私のように本格的に歌の発声を習った人間からしても、彼の発声は理に叶っていた。
それぐらい見事な発声をしていたのだ。
そしてそれは彼だけが身につけていた。
ポップス歌手にこのような発声をしている人間がいることにも驚いたし、当然、私の音楽仲間にも評価が高かった。
東方神起のメンバーの中で、彼だけが発声が違う、ということで有名だったのだ。
その頃の歌声と今の歌声は明らかに違う。
その原因は、韓国語と日本語という2つの言語にあると私は考えている。
音楽評論の観点から考えた時、彼の発声は非常に興味深いものがある。
これは、彼のように二つの言語を歌う歌手がほぼいないからだ。
特に彼の場合、日本語曲と韓国語曲とでは明らかに発声ポジションが変わり、声の質が変わる。
これが発声学的に見たとき、非常に面白いと感じる点である。
多くの歌手の場合、英語と日本語を歌っている歌手は多い。
確かに日本活動をするKPOP歌手には彼のように日本語で歌を歌っている歌手は少なからずいる。
しかし、彼のように日本語と韓国語での発声ポジションの違いが如実に歌声の変化として現れる歌手は彼以外に記憶にない。
だが、同じ一人の人間の声帯である。
どんなに二つの言語を歌い分けると言っても、どうしてもその時の環境に引っ張られる。
だから、彼の歌は、韓国に長くいる時と、日本に長くいる時では発声ポジションが異なる、と言った方が正しいのかもしれない。
東方神起時代の彼の歌声は、日本語の場合は、非常に鼻腔に響いた濃厚な響きと透明性のある伸びのある歌声だった。
それに対し、韓国語では、どちらかといえば、全体にハスキーで濃厚な響きの中にハスキーさが勝った歌声をしていた。これは、韓国語を正確に発音しようとすると、どうしても喉に落とした発音や声帯を擦った発音にならざるを得ないからである。そのポジションで歌おうとすると、発声ポジションは喉に落ちてしまう、という現象になる。
しかし、これも長く日本生活が続くと、日本語の濃厚な響きのままで韓国語の曲を歌うことになる。
それがドラマ「成均館スキャンダル」の主題歌「君には別れ、僕には待つということ」である。
私は彼が日本活動が出来なくなった8年間に歌った韓国語の歌で、この曲と「トライアングル」の「嫌でも」の2曲だけが日本語ポジションで歌われた楽曲だと思っている。
この2曲の歌声は、彼の伸びやかでハスキー気味な高音と濃厚な中音が使われている歌で、それほど韓国色の強い歌声になっていないのが特徴である。
近年、彼が日本活動を再開してからの日本語の歌声が変わった、という評価があるが、これは日本語曲だけではなく、韓国語曲も同様に変わっている。
声全体の色彩が濃くなり、透明感がなくなった。
これは加齢による声帯の成熟という肉体的器官の変化によるものだと私は考える。
彼の場合、元々の歌声はバリトンである。高音部は正しい発声を獲得したことによって、伸ばした部分であり、それが証拠に発声を変える以前の歌声は、高音部は細く、今ほどの音域を持たない。またファルセットによる発声のボリュームダウンが顕著で、今のようにヘッドボイスへの転換テクニックも持っていない。
元々の音域であるバリトンの色彩が高音部まで伸びてきているのが、現在の歌声であり、さらに日本語の場合、彼の意識の中に、「綺麗に歌おう」「フレーズを綺麗に納めよう」とする意図が非常に見える。
これは、母音の「あ」が使われる言葉の音節に顕著で、その部分だけを取り出してチェックしてみると、全ての部分で綺麗に鼻腔に「あ」の母音を響かせて歌うという特徴が見られる。
こういう点から、彼が日本語の歌を綺麗に歌おう、日本語を綺麗に発音しようと意識的にしていることがわかる。
その為に、その言葉を含むフレーズだけが突出した響きになることがある。
これが東方神起時代の日本語の発音と歌声との明らかな違いであるように感じる。
新曲「BRAEKING DAWN」の歌は、始まりからこの特徴が非常に顕著である。
全体に扁平的な発音で、鼻腔に意識的に響かせている。
彼の特徴である中・低音域の縦に深い響きが姿を消し、完全に扁平的で横に広がった響きになっている。
また言葉のタンギングを鋭くしながら、鼻腔に響かせる為、響きは前に出て「あ」「え」「お」という母音を含む言葉だけが前に突出した印象の歌声になっている。
This feeling こんな気持ち初めてさ
僕にこんな感情 keeping me in surprise
そう永遠じゃない 大切な刹那
その笑顔を守りたい
このように非常に「あ」「え」「お」の母音を含む言葉が多く使われている歌詞になっているのが、今回の歌声の特徴の一つとも言える。
彼はおそらく今後も日本語と韓国語の歌を並行して歌い続けていくことに変わりはない。
そうなった時、彼の日本語の歌声の変化がどのように韓国語の歌声に影響するのか、またその反対に韓国語の歌声が日本語の歌声にどのように影響を及ぼすのか、ということは非常に興味深い。
現在のところ、彼の歌声は、両方の言語の歌声が非常に似通ってきていると言える。
韓国語の歌声にも日本語の響きが明らかに存在するのは、やはり日本語の歌を数多く歌っている証拠であるとも言える。
こういう歌声を持つ彼が、非常に歌手として魅力的であると私は考える。
声帯の成熟期に入り、今後、どのように歌声が変化していくのか、それも含めて歌手ジェジュンの歌声は非常に魅力的である。
※
歌手の魅力はもちろん歌声だけに限ったものではない。
音楽性や表現力、パフォーマンスなど多くの要素を持つ。
そういう部分に於いても、彼だけでなく多くの歌手を多角的な部分から見た分析をしていきたいと思うが、歌手は歌声が命である。
先ずは、この部分の魅力から探っていくのが妥当な線ではないだろうか。