NEWSのメンバーだった手越祐也がジャニーズを契約満了を待たずに退所し、活動を始めている。

彼の動画も呟きも読んだし、それに対する批判も読んだ。

だが人生は一度きりだ。彼が一度きりの人生を自分のやりたいことをするためにステージを変えたということを非難する権利は誰にもない。

彼が今までも素行や発言で物議を醸したことは何となく知っている。それでも彼の勇気と決断は十分支持するに値する。

今井翼、錦戸亮、渋谷すばるなど退所するメンバーが相次いでいる。その後の結果が自分達の思い通りに行っているかどうかは別として、その決断自体は評価に値するものだと私は感じる。

アイドルが事務所を退所して独立する、ということについて考えてみた。

 

アイドルというジャンルは初めからイメージが作られている。イメージという鎧を被って彼らはデビューしてくる。それは実際の彼らの姿とは大きく離れていたとしても、そのイメージを壊すことは許されない。AKBなどの女性アイドルグループに在籍している人間が「卒業」という名のもとにアイドル活動を辞め、女優業やミュージカルなど自分のやりたい分野に円満に転身していくのに対し、ジャニーズに代表される男性アイドルの場合、「卒業」という言葉はなく30代になっても40代になってもデビュー当時のイメージを継承し続けることを要求される世界は、彼らにとって非常に酷な世界であるとも言える。

今回の手越を始め、錦戸、渋谷など最近退所した彼らに共通するのは、「自分のやりたいことをする」という認識だろう。

アイドルという殻を被り続けることは、ある種、巨大事務所の中で芸能人としての活動が安全、安泰である保証のようなものを手に入れる代わりに、芸能人として、アーティストとして冒険すること、自分の考えで表現活動をすることは許されない、ということになる。あくまでも事務所の方針の中で活動は許されるということになるのだ。

 

芸能活動というのは、自己顕示欲の現れの一つでもある。

自分を表現したい、という欲求を持たない人間は芸能人になることは出来ない。なぜなら芸能人というのは、常に自分を大衆の前にさらけ出す職業だからだ。

アイドルというイメージでデビューした彼らは、事務所の壮大な計画に乗って活動することを条件とされている。

プライベートも徹底的に管理され、少年期から公私共にあらゆる部分においてフォローを受けることになる。

それは仕事のスケジュール管理のみならず、体調管理、歌やダンスの技術的管理、肉体管理などありとあらゆるものが管理される中で、ベルトコンベアーに乗せられたように毎日のスケジュールをこなしていく場合が多い。

そんなふうに全てを管理された中で少年期から過ごして来た為に、ある意味では育っていない部分もあったりする。それが自己管理能力と自立心だと感じる。

巨大な事務所に守られ管理された中では、自己管理はある意味必要なく、自立心は育ちにくいのではないかと思われる。それでもタレント活動や俳優活動を通して多くの人間と接する中で、自分の表現力や欲求が高まってくるのは青年期から成熟期を迎えていく人間にとって正常な発達だといえるだろう。

 

もっと本格的に歌が歌いたい。

ソロ活動がしたい。

俳優として本格的に勉強をしたい…など、欲求が出てくるのは当たり前だ。

しかしアイドルという冠をつけ、グループ活動をしている限り、自分だけがそのような欲求を実現することは許されない。そうやって自分の要求を呑み込み続け、アイドル活動をし続けていることにいつしか疑問や不満が溜まるのは、当たり前のことだとも言える。

 

 

 

人生は一度きりしかない。

たとえアイドルであっても、自分の人生は自分のものであって、事務所のものでもファンのものでもない。

自分の欲求や自分の人生を突き詰めて考えていった結果、事務所を辞め、アイドルを辞めて活動する、という選択をする人間が出てくるのは致し方ないことだと思う。

人間は本心を誤魔化して生きていくことは出来ない。

自分の本心に従った結果、独立という選択肢が見えて来たというのが今回の退所に繋がったとも言える。

 

人生は一度きりだ。

アイドルであっても自分の人生を選ぶ権利はある。

 

彼がアイドルを辞め、今後、どのような道を歩むかはわからないが、それも彼の人生だ。

 

手越祐也の退所に、そんなことを思った。