2000年からの5年間、三浦大知は完全に歌手活動を休業した。理由は変声期に伴うもの、だったが、変声期が5年あったかどうかは定かではない。普通は、長くても1年で歌える状態にはなる。稀に何年もかかる人がいるが、それは、その間に歌を歌っていたことが多い。韓国アイドルの中には、十年近くも変声期に苦しんだという人もいるが、韓国のアイドル業界は飽和気味で、一瞬とも活動をやめることが出来ない実情がある。そういう意味で、日本の業界は、成熟していると言える。
理由はどうあれ、三浦大知は、5年間の空白期間を経て、ソロデビューした。
Folderでメインヴォーカルを歌っていた。
グループ活動でメインヴォーカルを歌っていた人がソロになる事例が度々ある。
グループ活動の中でメインヴォーカルを取るというのは、その人の声に華があるからだ。
「華」
よくソリストの歌を評価するのに使われる単語である。
「華がある」というのは、持って生まれた声が、際立っている事を言う。
人の声は、千差万別で、同じ声の持ち主はいない。
声紋と言われるように、指紋と同じで、個人それぞれに異なる。
声帯の形、それを支える筋肉、さらに骨格などによって、声紋が決まる。
よく親子で声が似ているというのは、これらの器官が、親子だと似る確立が高い為でもある。
ソロを目指す人にとって、声に華があるかどうかは、非常に重要な要素になる。
特徴のある歌声。一度聞けば忘れられない歌声。切なかったり、物悲しかったり、美しかったり、ハスキーだったり…
それこそ、歌手にとって、持って生まれた声がどういう声であるかは神から与えられた天分でもある。それは、持って生まれた声だけは、どうしようもないからである。他の楽器なら、いい音が出るものに買い換えることもできるが、声帯という楽器は取替が出来ない。
グループのメインヴォーカルをとっていたからと言って、必ずソロ歌手として成功するかどうかは、また別問題である。但し、成功する鍵の大きな要素の一つに「声」があることだけは確かなことだ。
三浦大知の歌声は、非常にクリアで、綺麗なハイトーンヴォイスだ。
彼の歌声は、直線的で鋭角に音楽を作り上げていく。
「Keep It Goin’On」で奏でられる歌声は、その持ち味を十分に発揮している。
キレのいいダンスと同様に歌もキレが非常に良い。そして、音程がぶれない。不必要なビブラートもなく直線的で綺麗な響きだ。
その音程と歌声を支えるのが、日本語の発音だ。
歌詞のテロップを全く必要としない正確な言葉の発音は、耳に心地よく、歌声と同時に日本語の単語が浮かんでくる。
アップテンポな曲であるのに、それを感じさせない程、正確に際立った日本語だ。
彼がどうしてこれほど際立った日本語の発音が出来るのか、注意深く口許の映像を確認した。
発音は、口の形と歯並びが大きく影響する。
彼の口元も開きも癖がなく、また歯並びも良い。正確な滑舌が可能な骨格であることがわかる。
そして、大きく口が開く。舌根が柔らかく、よく動き、よく下がる。
これが、彼の際立った日本語の発音を支えるテクニックだとわかる。
これらは、9歳でデビューした頃から変わらない口の開け方で、如何に少年期に基礎を身につけることが大切なのかをも証明している。
日本でR&Bの歌い手が少ないのは、早いリズムに乗せて日本語を処理することに高度のテクニックを要するからにほかならない。
彼が、日本のR&Bの第一人者だと思われる所以もここにある。