台風の影響で開催が危ぶまれた13日の朝日ドリームフェスティバル。
久しぶりに聴いたジェジュンの歌声は非常に充実したものだった。

セトリに関してはもうあちこちに出ているが、非常によく考えられたセトリだった。
オリジナルのダンス曲「Sweetest Love」に始まり、誰もが知っているJPOPのカバー曲「未来予想図II」「メロディー」「Forget-me-not(勿忘草)」のバラード曲を続け、再びオリジナルでTV朝日のドラマのテーマソングにもなった「君だけになる前に」、そして「Good Morning Nigth」で会場を盛り上げ、最後に「守ってあげる」でしっかりと聴かせて終わる、というファンでない一般のリスナーに向けたセトリだったと感じる。
音楽フェスティバルでは、自分のファンでない観客が大勢いる。その観客に向けてどれぐらいのパフォーマンスが出来るのかが重要なポイントになる。なぜならそれをきっかけに新規のファンを獲得することに繋がるからだ。
そういう点で、今回のセトリは2年前に出演した時とは大きく違うものだった。

7曲歌った中で最も印象に残ったのは、「未来予想図II」だった。
もう何度もTVで聴いているこの曲が一番印象に残るとは実は想像もしていなかった。しかし、この日の「未来予想図II」は非常によく考えられた歌唱だったと言える。
先ず第一に感じたのは、ブレス音が殆どしない、ということだった。
これはこの日の全曲を通して言えることでもある。僅かに最終曲の「守ってあげる」には何ヶ所もブレス音が存在する。しかしそれは自然に入ったものであって、今までの印象であるブレス音を故意的に入れる、強調して使用する、というスタンスのものとは明らかに異なる印象を持った。それは、彼がワンフレーズ毎にマイクを口元から離したことからも彼の意思を感じるものだった。さらに気になるという指摘のある日本語の発音に於いても、この日は全くと言っていいほどz音が気にならない綺麗な自然な発音になっていたと思う。
これは明らかにこれらの点において修正してきているのを感じる。
また歌声に関しては、この日はどの曲も充実したミックスボイスが使われていた。

「未来予想図II」はアルバムでは非常に細いストレートボイスが使われており、彼本来の持ち声とは異なる印象を持つ。しかしこの日の歌声は、彼の持ち味である中・低音域が非常に充実した響きであり、それに伴い高音部もそのままの音色のミックスボイスで歌われた為にアルバムの歌声とは大きく異なり、綺麗な彼の歌声を堪能することが出来た。

甘く濃厚な音色の中・低音域は、ジェジュンという歌手の最も魅力的な歌声だ。
ハスキー気味なストレートボイスの音色はハイトーンボイスの歌手にはありがちな音色だが、彼の中音から低音にかけての甘く濃厚なミルクのような音色は、彼にしか出せない色であり、この部分が綺麗に響くかどうかが彼の歌手としての生命線になると感じる。それゆえ、今回の彼の歌声は、この部分の音色が多用され非常に状態がいいことを示していた。
これらの歌声を中心に置いた「メロディー」「Forget-me-not」は非常に印象的であり、彼の表現力と相まって多くの聴衆の心に届いたに違いない。それはファン以外の人間の根底に届くような歌声だったと言える。

音楽フェスティバルのような複数の歌手やグループが多く登場する中で、自分の色を出し切るのは非常に難しい。40分間という限られた時間の中で如何に自分の音楽を表現できるか。それはセトリ、時間配分、MCなどの中で何を中心に据えてメッセージとして伝えるのかという課題の処理能力も問われている。、
雑然とした会場の雰囲気と躍動した空気感の中で、それまでに出演しているアーティストの空気感に流されることなく自分の色を打ち出していく能力を要求されるものだ。

2年前、出演した時には、確かMCが長すぎて予定していた曲をカットして歌ったと記憶している。
あの頃はまだ日本活動が再開されておらず、久しぶりの日本にステージに彼自身が伝えたいことを処理しきれなかった感があったが、今回は次の日本でのステージが約束されている中で、MCをカットし、「歌うこと」を全面に押し出し、ファン以外の観客にアピールすることを意識したセトリだったと感じる。それも歌手活動が約束されている心理的余裕というものを感じさせるものだった。

この日の彼の歌は非常に集中したものだったと感じる。
特にバラード3曲に於ける歌唱は、非常に力の入ったもので、彼の強い意志を感じさせる歌声でもあった。

最後の「守ってあげる」には、強い意志よりも優しい愛情を感じさせるものであり、綺麗に響いた明るいミックスボイスの歌声は充実度よりも透明度を感じさせる音色になっていた。

ジェジュンという歌手は、彼の心情がそのまま歌声の色に現れる。

一曲入魂。

まさに彼の心情をそのまま映し出す音色の歌だった。