たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。

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今回は、『Habit』で2022年度の日本レコード大賞を受賞したセカオワことSEKAI NO OWARIを取り上げます。世代を問わず、多くの人を虜にする魅力はどこにあるのか、1人が楽曲を作るのではなく、メンバー同士で作り合う楽曲のスタイルなど、独自の世界観を持つ彼らの魅力を探りたいと思います。

(前編はこちらから)

セカオワの魅力は、なんと言っても、その世界観ですが、この世界観をしっかり支えているものの1つに、ボーカリストFukaseの歌声があります。
彼の歌声を音質鑑定してみました。

Fukaseの歌声の特徴を音質鑑定してみると

Fukaseの歌声の特徴
① ストレートボイス
② 明るい響き
③ 響きに混濁はなく、ビブラートはほぼ感じない
④ やや鼻腔に入った甘めの音質
⑤ 全体に軽快な音質
⑥ 音域的には、楽曲に中音域を中心にしたものが多い為、中声区のバリトンと思われる
⑦ 全体的に透明だが、ブレス音が混じった透明さではなく、ブレスが全て歌声に変換された響き
⑧ 言葉が非常に明確
⑨ 声量は十分で伸びやかな音質をしている

以上のような特徴を感じさせます。

彼は、透明感のある歌声が特徴で、今年39歳を迎えますが、以前の歌声と聴き比べてみると、今の方が透明感が増している、という印象を持ちます。
デビュー当時は、もう少し全体にブレスが混じった歌声で、やや息漏れを感じさせるのです。

しかし、その後、彼の歌声は進化しています。今では、ブレスの全てを歌声に変え、どのフレーズのどの音域を取っても、息漏れは全く感じさせず、声のポジションが同じで、綺麗な歌声の粒が一直線上に並んでいる、という印象を与えているのです。

全体に明るい音質は、来年は40歳、という年齢を全く意識させず、近年ではかえって若返っているような印象さえ持ちます。

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早口で歌っても、言葉が滑らない

 

続きはこちらからSEKAI NO OWARI『聴く人全てをファンタジーな世界に連れて行く魔法の音楽』(後編)人生を変えるJ-POP[第49回]|青春オンライン (note.com)