たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。

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今回扱うのは、透明感溢れる歌声で多くの人を魅了する女性シンガーUruです。彼女は個人に関する情報が全て非公開になっているため、ここでは、デビューから現在までの活躍と「奇跡の歌声」と呼ばれる彼女の歌声の魅力について書いていきたいと思います。

歌手 Uruの登場

Uruは、その字の通り、「ウル」と読みます。この名前の由来については分かりません。

歌手Uruの登場は、2013年に専用のYouTubeチャンネルを開設したことから始まります。このチャンネルの再生回数は、デビュー時点で4400万回以上になり、チャンネル登録者は14万人を超えるものとなっていました。

実はこのチャンネル開設より前、彼女はあるオーディションを受け、審査に通ったにもかかわらず、途中で逃げ出したことを告白しています。(

書類審査とデモテープ審査に通ったものの、次の段階に進むのが怖くなり、審査に行かなかったとか。

オーディションの一件から3年ほど経った頃、大変辛い経験をしていたとき、彼女は、友人にスキマスイッチのライブに誘われます。そのライブに出かけたことが彼女にもう一度歌手になろうと思わせたきっかけになったようです。

彼女はライブ後も涙が止まらなかったとか。何かからやっと解放されたような気分と、あの時、オーディションで逃げ出していなければ、今頃、デビューして彼らと一緒に何かできていたかも知れないと思う悔しい気持ちとが入り混じった複雑な涙だったとのこと。

スキマスイッチの音楽に触れたことで心が素直になれたことがきっかけとなり()、2013年に自分専用のYouTubeチャンネルを開設して、カバー曲を歌った動画を次々アップし始めました。やっと自分の過去を振り切って、前を向いて一歩を踏み出す気持ちになったのでしょう。

彼女のこのようにやっと動き始めた気持ちによってアップされ出した動画は、Uruという歌手の特徴を前面に出すものとなっています。

このチャンネルは、モノクロの画面の端にマイクの前に立つ彼女の姿が半分だけ映し出され、ほぼ動きのない中で、彼女の歌声だけが響いていくという作りなのですが、視聴者には、彼女の顔も身体も半身しか見えません。その分、ビジュアルなどに惑わされることなく、歌声だけがクローズアップされる形になっているのが特徴です。

私自身もこの頃の彼女の動画を拝見した1人ですが、モノクロ画面と共に彼女の歌声が印象的ではっきり記憶に残るものとなりました。

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メジャーデビューは、ある俳優のひと言から

このチャンネルの曲数は、カバー曲を中心に100本に及ぶものとなり、 ある番組で俳優の小日向文世が「Uruの動画を見ている」と話したことで、評判を呼ぶようになりました。

そのことから、現事務所イドエンターテインメントから声がかかり、2016年『星の中の君』でソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズからメジャーデビューを果たしたのです。

この曲は、映画「夏美のホタル」主題歌に抜擢され、また10月に発売した2ndシングル「The last rain」に収録の『ホントは、ね』は、Canon「PhotoJewel S」CMソングに選ばれるなど、順調なデビューになったのです。

2017年1月には、 MBS開局65周年記念の新春ドラマ特別企画「しあわせの記憶」主題歌として書き下ろしの『娘より』、2月にはTVアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」エンディングテーマとして3rdシングルの『フリージア』、さらに6月にはドラマ「フランケンシュタインの恋」挿入歌として4thシングル『しあわせの詩』など、その後も彼女は自身が書き下ろした楽曲と共に活動の幅を広げていきます。

この年の11月に5th シングルとして『奇蹟』を発売。この楽曲は、ドラマ「コウノドリ 命についてのすべてのこと」第2シリーズ主題歌として起用されました。

ドラマやアニメとのタイアップで次々と曲を発表

 

続きはこちらからUru『神様からのギフト、奇跡の歌声』(前編)人生を変えるJ-POP[第36回]|青春オンライン (note.com)