ジェジュンが出演した『ONCE』での歌唱についてのレビューをリクエストされたので、公開されている音源を拝聴した。

 

曲目は4曲。

『One Kiss』『Snail』『Hug me』『Run Away』

一言で印象を言えば、非常に充実した歌唱だったと言える。

先日の韓国フェスタと違い、よく歌声がコントロールされており、伸びも声の艶も申し分なかった。

『One Kiss』『Run Away』に関しては、自分のオリジナル曲であり、よく歌い込まれた歌である。

この「よく歌い込まれた曲」というものほど、歌手にとって安心なものはない。なぜなら、どんなに悪コンディションであっても、その曲を歌えば声帯が正常に反応してくれるからである。

これは、声帯が筋肉の一種であり、「歌う」という行為に対しては、条件反射のように筋肉が反応するからである。即ち、よく歌い込まれた曲というものは、何度も何度も繰り返し、その曲に対する筋肉の反射が記憶として身体に刻み込まれていく。

その為、どんなに年齢を重ねても、ある程度のクオリティーを保って歌うことが出来る曲で、彼に限らず、どんな歌手にとっても安心感のあるものである。

 

今回の彼の歌は、この2曲の安定した歌声を中心に比較的低音部から中音域にかけてのメロディー展開がされている『Snail』と『Hug me』の2曲が選択されており、そこにも彼の経験に裏付けられたスタンスを感じるものである。

 

彼の持ち味である「高音の伸び」に加え、中音部から低音部の太さのある甘い歌声を組み合わせることで、十分に歌手としての魅力を伝えた歌唱になっていた。

 

今回の楽曲を聴くと、彼の韓国語の歌と日本語の歌の違いが如実に現れている。

韓国語の歌の場合、彼は発声ポジションを比較的に低めに取り、ややチェストボイスを多用しながら、ミックスボイスに転換していくという手法を取るのに対し、日本語の歌の場合は、発声ポジションが全体的に高く、ミックスボイスからハイトーンボイスを多用する。その為、響きが韓国語の歌よりも複雑になるのが特徴として挙げられる。

また韓国語の場合は、チェストボイスのポジションからの力で押した歌声が存在するのに対し、日本語の場合は、力で押す響きというものはほぼ存在しない。全体的に声の響きで歌うことが多く、言葉のタンギングも比較的緩くなる。

これらの歌い方の違いは、そのまま韓国語と日本語という2つの言語の持つ特徴の違いに共通し、ジェジュンという歌手の音楽の世界の複雑さを現すものになっている。

これらの特徴が、今後、彼の音楽の中でどのようにオリジナル性を発揮していくのか、非常に興味深い。