歌手の一発撮りの歌を提供する「THE FIRST TAKE」
ここで歌う中島美嘉の『雪の華』を聴いた。
このTHE FIRST TAKE というサイトは、歌手の実力をある意味で丸裸にする。
最初の頃は、新人の登竜門のようになっているところがあり、北村拓哉の『猫』やYOASOBIの『夜に駆ける』、又。最近では優里の『ドライフラワー』などのブレイクは、このサイトが間違いなくきっかけになっている。
そんな中で、ここのところ、JUJUなどベテラン歌手の登場もあり、なかなか聴いていて面白い。
今回、アップされたのは中島美嘉の『雪の華』だった。
あまりにも有名なこの曲をアコースティック編成の伴奏だけで歌っていく。
彼女の歌声は透明感溢れており、歌声の響きの濃淡は、まさに、そのまま、はかなく消えていく雪の華そのものだ。
この曲で使われている彼女の歌声は、
「今年最初の雪の華を〜」
からの無色透明的な歌声から、
「〜眺めているこの時に〜」への
やがて濃厚な響きが現れていく移り変わりが手に取るようにわかる。
そして、
「ただ君を愛してる
心からそう思った」
このフレーズの部分の無色透明の歌声はそのまま儚さを現しているようで見事だ。
この歌での中島美嘉の言葉の処理の仕方は、非常に特徴的だ。
一つ一つの言葉を彼女自身が噛み締めるように歌い、音符の中に言葉を落とし込んで並べていく。
それはまるで音楽が前へ前へと進もうとするのを彼女自身が嫌がっているように感じるほど、
一つ一つの言葉を大切に紡いでいく。
後半のサビの繰り返し
「甘えとか弱さじゃない
ただ、キミとずっと
このまま一緒にいたい
素直にそう思える
この街に降り積もってく
真っ白な雪の華……」
「素直にそう思える」
このフレーズを彼女が地団駄踏みながら、音楽も自分の歌も前へ行くのをくい止め、
「この街に降り積もっていく真っ白な雪の華〜」に続くサビへと
もう一度高揚感を繋いでいく歌い方が
非常に冷静な中の彼女の情熱性を現しており、印象的だった。
この静かな情熱が『雪の華』の世界観にピッタリなのだ。
そうやって最後のフレーズ
「これからもキミとずっと」
の透明感に続いていくのが見事だ。
彼女がこの歌を如何に大切に歌い紡いでいるのが手に取るようにわかる歌だった。
まさに彼女の歌声そのものが『雪の華』だと思った。