ボーカロイド世代の歌手である。

最近はボーカロイド音楽が盛んだが、多くのボーカロイド歌手が金属系の歌声であるのに対し、この人の歌声は珍しく弦楽器系だ。

ミックスボイスが中心の中・低音域は太めの響きが主流の甘めの歌声になり、ファルセットからのヘッドボイスの高音では、綺麗な響きが中心の歌声になる。

ミックスボイス、チェストボイスとヘッドボイスが入れ替わり立ち替わり繰り返し出てくる。

アップテンポの曲に合わせての高速メロディーが低音域から高音域までを行ったり来たりしながらメロディーが展開されていくが、これらの歌声のコントロールは見事だ。

響きが擦れたり、ひっくり返ったりすることなく、安定した形で歌声が繰り返されていく。

 

YOASOBIの幾田リラもそうだが、ボーカロイドを歌う人は、細めのストレートボイスの人が多い。なぜなら、ビブラートのある太めの響きの歌声は、ボーカロイド音楽の高速メロディーの展開を歌いこなすのに、どちらかと言えば不向きであるからだ。

ボーカロイド音楽は正確さが身上である。だからPC上で合成された歌声が作り出す音楽の世界とも言える。歌声が、歌声でなく、楽器の一つとしてその楽曲を構成する要素という側面を持つものが多い。

その為に高速回転のメロディーが多く、歌声のコントロールが非常に難しい。それゆえ、ストレートボイスの細めの金属系の歌声が適している。それに対し、ビブラートがある歌声の人が不向きなのは、高速音程の高低の正確さをビブラートの響きの揺れや音程の揺れが邪魔するからである。その為、響きを固定して、ビブラートを極力出さないようにして歌うことが正確さを期す方法になる。

しかし、彼女の場合、ビブラートは歴然として存在し、太めの響きも甘めの声も健在だ。その中で、正確な音程を取って行くテクニックが非常に優れている。

ビブラートがあるということは、歌声の色彩が豊かになり、それだけで、様々な歌声が聴こえることになる。彼女の場合も、低音部、中音部、高音部と様々な音色の歌声が高速メロディーに合わせて、どんどん顔を出してくる。

それが非常に面白いと思った。

 

「うっせえわ」も同様だが、非常にアグレッシブな音楽が印象的であり、そこも従来のボーカロイド歌手との違いを際立たせている。