たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。
今回は、約2年間の活動休止期間を経て、昨年、活動を再開させたMrs. GREEN APPLEを取り上げます。彼らのデビューから5年間活躍した“フェーズ1”と呼ばれるものと昨年活動を再開した“フェーズ2”と呼ばれるもののそれぞれの音楽の特徴や、ボーカリスト大森元貴のボーカルの魅力などについても分析したいと思います。
Mrs. GREEN APPLEの誕生
Mrs. GREEN APPLEは、2013年に結成された日本のロックバンドです。当時、高校2年生だった大森元貴を中心に若井滉斗(ギター)、山中綾華(ドラムス)、松尾拓海(ベース・2014年に脱退後、高野清宗が加入)の4人で結成されました。その後、大森の誘いで藤澤涼架(キーボード)が加入し5人体制になりました。
Mrs. GREEN APPLEというユニークな名前は、直訳すると「青リンゴ婦人」という感じになりますが、元々、グループ名を考えるときに、”身近にある具体的なイメージができる物をバンド名にしたい”というところから食べ物の名前を取り入れたとのこと。
「僕達は人間的にもガッツリとロックという人でも無いので、中性的なイメージを取り入れる為に”Mrs.”という言葉を付けました」(※)と話しています。
こうやって誕生したMrs. GREEN APPLEは通称ミセスと呼ばれています(以降は「ミセス」と表記)。
ミセスの活動は2015年のメジャーデビューから2020年までの5年間と約2年の活動休止期間を経て再開した2022年から現在までの2期にわかれます。彼らは、最初の5年間を”フェーズ1”とし、再開後を”フェーズ2”としています。
メジャーデビュー後は順調に認知度をあげ続け…
まず、“フェーズ1”の活動は、2015年7月、人気曲である『StaRt』を含むミニアルバム『Variety』をEMI Recordsから発売し、メジャーデビューしたことから始まりました。
彼らの音楽はポップロックを中心としたもので、非常に軽快感の強いサウンドが特徴です。
この年は、対バンツアーや渋谷における初のワンマンライブなど順調に活動。12月には1stシングル『Speaking』が発売され、この楽曲はテレビ東京系のアニメ『遊☆戯☆王ARC-V』のエンディングテーマとして書き下ろされたものです。
2016年1月には1stアルバム『TWELVE』を発売し、6月に出したシングル『サママ・フェスティバル!』は日本工学院のCMソングに選ばれました。また、2017年1月、2ndアルバム『Mrs. GREEN APPLE』を発売、5月にはシングル『どこかで日は昇る』が、映画&ドラマ『笑う招き猫』の主題歌&エンディング・テーマとなりました。
8月に発売した5枚目のシングル『WanteD! WanteD!』は、ドラマ『僕たちがやりました』のオープニング・テーマとなりました。
この曲は、これまでのロック調のものから、初の挑戦とも言えるダンスミュージックになっています。この意外性が一気に認知度を広げたとも言えるでしょう。