たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。

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今回扱うのは、男女混合の4人組ポップ・ロックバンドである緑黄色社会。昨年のNHK紅白歌合戦で歌ったことで記憶にある方も多いのではないでしょうか。結成11年目、メジャーデビューして5年目というバンドですが、独特のサウンドを持ち、若い世代から絶大な人気と支持を受けています。彼らの作り出すサウンドの特徴や、楽曲作り、また、ボーカルを担当する長屋晴子の歌声の魅力についても書いていきたいと思います。

そのユニークなバンド名はどこから?

緑黄色社会は、その字の通り、「りょくおうしょく社会」と読みます。メンバーは、ボーカルとギター担当の長屋晴子、ギターの小林壱誓、キーボードのpeppe、ベースの穴見真吾の4人で、コーラスは長屋以外の全員が担当しています。

このように、それぞれの持ち味を十分に活かしながら、全員で音楽を作り上げるというコンセプトのグループと言えます。また、ドラムスがないという珍しい形態になっています。

このバンドは、元々、高校入学以前からSNSで知り合いだった長屋と小林が高校生になったら一緒にバンドを組もうという気持ちで、同じ高校に入学。その後、たまたま入学式で出会ったpeppeに声をかけ、2012年に同級生3人(長屋、peppe、小林)と小林の幼馴染を加えた4人で結成されました。

バンド名の「緑黄色社会」に深い意味はないとか。いつも長屋晴子が飲んでいるジュースの名前を元メンバー(ドラムス担当)が尋ねたところ、「緑黄色野菜」と答えたのを、「緑黄色社会」と聞き間違えたとか。

もともと、バンド名を考えるのに「日本語表記というか、漢字表記の名前がいいよね」という話をしていたとのこと()そういう軽い気持ちでついたバンド名のようですが、非常にインパクトのある名前で、通称「リョクシャカ」と呼ばれています。(以降、ここでもリョクシャカと表記します)

一気に知名度を上げた紅白歌合戦

彼らは、2018年、HERE、PLAY POPから1stフル・アルバム『緑黄色社会』を発売、同年ミニアルバム『溢れた水の行方』をEpicレコードジャパンから発売し、メジャーデビューしました。

2020年に発売された2ndアルバム『SINGALONG』収録の『Mela!』は、ストリーミング再生数が2億回を突破し、彼らの代表曲になっています。これらの順調な活躍によって、2022年年末の「NHK紅白歌合戦」に『Mela!』で初出場を果たしたのです。

紅白歌合戦では、白組の郷ひろみとの対抗で長屋晴子の伸び伸びとした歌声と共に記憶にある方も多いのではないかと思います。長屋晴子のパワフルで飛び抜けた歌唱力は、このグループの存在感を一気に多くの人に示したと言えるでしょう。

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1つのグループに多彩なジャンルの音楽が存在するという奇跡

 

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