たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。
連載第25回目は、日本を代表するグループ「DREAMS COME TRUE」を扱います。吉田美和の類まれな才能によって作り出される世界は中村正人のアレンジによって具現化し、多くのアーティストに影響を与えてきました。ドリカムの表現する世界と吉田美和のクリエイターとしての才能、さらに歌声の魅力について紐解いていきたいと思います。
(前編はこちらから)
歌詞ということばが、心に刺さってくる
実は私は、このコラムを執筆するまで、ドリカムの音楽は中村正人が作って吉田美和が歌っているのだという漠然とした印象を持っていました。
いくつかの曲に関して彼女が作っているのは知っていましたが、全曲が彼女の作詞で、楽曲も数曲を除いて多くが彼女の作品だと知ったのは、今回、この原稿を書くにあたって改めて情報を調べたからです。
クラシックの声楽出身の私は楽曲の作り手が誰なのかということよりも歌声の方に魅力を感じることが多く、ボーカリストとしての彼女の才能やパフォーマンス力が素晴らしいと感じていました。
しかし、ドリカムの楽曲の多くを聴くと、歌声に魅力を感じる私でも、彼女の歌うことばの1つ1つを脳裏で追いかけては心にことばが刺さってくる、という感触を持つのです。それほどに彼女の紡ぎ出すことばには人の心を振り向かせるだけの強い力を持があると言えるでしょう。
もちろん、楽譜の読めない彼女が歌い出すメロディーを採譜し、それをアレンジする中村の手腕は素晴らしいもので、中村あってこそのドリカム世界の具現化ですが、その世界観の中心になるのはやはり彼女の持つ歌声の魅力とことばというものではないかと感じます。
直覚的に音階を歌う、独特の歌い方
つづきはこちらからDREAMS COME TRUE『伝えたいメッセージを見事に切り取る歌姫』(後編)人生を変えるJ-POP[第25回]|青春オンライン (note.com)