ジェジュンが韓国に帰った途端に不安になる、というのを感じる。
仕方ない、韓国人だから。
そういう思いで自分の気持ちを呑み込む。
そういうファンをたくさん見てきた。
気持ちはとてもよくわかる。
ジェジュンをグループ時代から応援してきた人は特にそうだろうと思う。
なぜなら、突然、日本活動が無くなった経験をしているからだ。
私は12年前に彼のファンになった。
私の推し活生活は、いわゆる普通の人達の推し活とは最初から少し違っていた。
歌を聴き、CDを買い、過去の映像をDVDやYouTubeで追いかける。
今と違って、自分専用のPCも持っていなかったから、夫の留守の日中、時間を見つけては娘から教えられたYouTubeを観て、単純にファン生活を楽しんだのは、ほんの1月ぐらいだった。
今から思えば、あの頃が一番単純で楽しかったかもしれない。CDに入ったカードが他のメンバーのものだったから、当時、盛んだったmixiで初めてカードの交換をした。その時、知り合った唯一の友人は、今でも私の大切な友人だ。
そして分裂騒動。
人生で初めてのライブは、これから先、大丈夫なのだろうか、という不安が会場全体を覆っていた。
ファンになって半年足らずで初めて観た彼の顔は涙顔だった。
そんな始まりだった推し活生活は、その後も普通の単純な推し活ではなかった。
日本活動が打ち切られてから再開するまでの8年間。
この期間は、不安との戦い以外の何ものでもなかった。
どんなに彼が日本活動への気持ちを語っても不安は拭えない。
なぜなら人の気持ちは変わるからだ。
日本から完全に遠ざかってしまった2012年は、暗黒の時代、と呼ばれるほど全く暗闇の中に放り込まれた。
2013年にいきなりソロ歌手としての活動が始まり、日本にも2度戻ってきてライブを開催した。
それでも日本に彼が戻って来る保証はどこにもなかった。
そして彼自身もずっと不安を口にした。
それは2017年、除隊して日本で開催したライブでも何度も口にした。
彼のライブは、日本に戻ってこれた喜びと、これから何が起きるかわからない、という不安の気持ちを吐露する場所だったかもしれない。
それでもいつかは必ず日本に帰ってくる。
何の保証もない未来に微かな希望を抱いて彼を待ち続けた。
だから、その年の秋の突然の日本活動再開を発表された時の驚き、そして大手事務所との業務提携を知っての喜びの中にも一抹の不安を感じたファンはいたかもしれない。
2018年2月に活動が正式に再開され、彼の口から「今年はほとんど日本にいる」と言われて、やっと安心したのである。
そこからは彼のソロのCD、ソロアルバム、2度のライブツアー、TV番組への精力的な出演。
彼が望み、ファンも待ち続けた「日本でのまともな活動」「日本の芸能人と同じように活動する日本活動」というものが再開された。
だが、どんなに日本で活動しても、彼は韓国に戻るのである。
戻って韓国の仕事をする。
当たり前だ、韓国人なのだから。
歌を歌えない韓国に戻って歌手以外の仕事をする。
それでもファンはじっと耐えて待ち続ける。
コロナ禍の中、彼は韓国に戻ったきり、日本に帰れなくなった。
ほぼ2年という年月、まともな日本活動は出来なかった。
その間もファンは待ち続けた。
彼が必ず帰って来ると信じて待ち続けた。
彼が戻ってくれば、かつてのようにソロでCDを発売しソロ歌手としての活動が始まる。
そう信じて疑わなかった。
日本活動は彼と彼のファンだけの場所だったのだ。
2年ぶりに戻った彼の最初の活動は、元のメンバーとのコラボ曲だった。
その事実が古くから彼の活動を支え、彼のソロ活動を信じ待ち続けたファンの気持ちを根底から揺るがしている。
昔から、彼は自分の気持ちをファンに語ってきた。
それはライブという空間。
何の制約もなく誰に止められるでもないライブという空間で、彼は自分の気持ちを話すことが多かった。
逆に言えば、そこしか、本当の気持ちを話せる場所がなかったとも言える。
その彼の発言だけを信じ待ち続けたファンの気持ちを今回の発売と彼の発言は打ちのめすのに十分だったかもしれない。
もう、疲れた。
そういうファンは少なくない。
12年。
12年という長い年月、待ち続けたのである。
彼が日本に戻り、ソロ歌手として活動することをなぜ望み続けたのか。
グループ活動にあれほど拘り、誰よりもメンバーを愛した彼にソロ歌手としての活動を望むには、それなりの理由がある。
8年間、日本への変わらない気持ちを語ったのは、彼だけだ。
反日発言も慰安婦問題も一切、彼は口にしたことがない。
入隊中もその態度は変わらなかった。独島の歌すら、口にすることはなかった。
しかし、他のメンバーは違った。
そして明らかに彼が一番精神的に弱っていたとき、
彼がグループ活動に拘ったとき、
彼を支えているようには思えなかった。
8年間に起きたことを数え上げたらキリがない。
だから彼だけの活動を望んだのだ。
8年ぶりに再開された日本活動の場所は、彼自身が望み、彼自身の力で取り戻した場所だ。
その場所は、彼と彼のソロ活動を望み続けたファンの場所だった。
だからファンは彼の日本活動を必死で支えた。
彼のCDやアルバムが発売される度に多くの枚数を購入し、友人や知人、あちこちに配って回った。
「新人のジェジュンです」
新人の気持ちで、一からやり直そうと日本に1人で戻ってきた彼。
そういう彼を1人でも多くの日本人に知ってもらいたい。
彼が素晴らしい歌手で、韓国人でありながらJ-POPが好きで、J-POP歌手としてJ-POPの歌を歌っているのだということを1人でも多くの人に知って欲しい。
そんな気持ちでこの4年、彼の日本活動を支え続けたファンは、今、複雑な思いに捉われている。
彼を応援したい、彼を支えたいと思うのに、コラボ曲だった事実が素直な気持ちに歯止めをかけているのだ。
彼のファンを見るとき、疲弊しきっているのを感じる。
8年という空白期間、ただひたすらに待ち続けた。
そしてやっと再開されたと思った途端のコロナ。
韓国という国が、これほど遠い場所に感じたことはなかったかもしれない。
ただでさえ、彼が韓国に戻れば、自分の気持ちに蓋をして耐えて待っている。
その気持ちの繰り返しだ。
12年という年月は、短くない。
30代だったファンは40代になり、40代だったファンは50代になる。
韓流ブームを支えた50代は60代だ。
かつての情熱を持ち続けられるほど、若くはない。
疲弊しきっている。
その原因は「不安」
彼がこのまま日本に戻ってこないかもしれない、という不安。
彼がまた、元のメンバーと活動を再開するのではないか、という不安。
彼がソロ歌手として活動しないのではないか、という不安。
彼の気持ちがわからない、という不安。
不安、不安、不安。
この12年、彼のファン社会を覆っているのは、不安由来だ。
なぜなら、人の気持ちは変わるから。
どんなに彼が「日本活動を続ける」と言っても、どこにも保証はない。
彼の日本活動は、昔も今も、彼の気持ち次第で決まる。
彼がある日、突然、「日本活動は辞めます」と言えば、それでおしまい。
今まで多くの韓国人歌手が、そうやって、日本活動をやめてきた。
ましてや、個人事務所を立ち上げた彼の活動は、彼の気持ち次第でどうにでもなる。
そんな不安定な状況の上に成り立っているのだ。
もう疲れた。
待ち続けるのを疲れた、と言って、ファンが離脱している。
今回のコラボ曲の発表は、待ち続けた彼女達の情熱を消失させるに十分な出来事だったと言えるかもしれない。
彼が選んだ活動だから。
彼が決めたことだから。
そう自分を納得させて応援しようとする人もいるだろう。
そうやって、ファンの気持ちを分断させるに値するだけの活動再開だった。
今年、彼はソロアルバムを発売する。
そしてツアーが発表されるだろう。
そこは、彼1人の場所だろうか。
彼だけを観れる場所だろうか。
ファンの不安は尽きない。
そして、彼は韓国に昨日帰ってしまった。
また待ち続ける日々が始まる。
彼が決めたことだから、彼が発言したことだけが全て。
そう言って憂えるファンを批判するファンもいる。
しかし、果たしてそうなのか。
彼が話していることは本当に全てか。
人の気持ちは変わる。
何よりも自分を支え続けてきてくれたファンは誰なのか…
今回のことは、彼にも真実を突きつけている。
そして、彼の気持ちも変わる。今、彼の口から話している言葉が全てとは限らない。
韓国にいた時と、2年振りにファンに出会った後とでは気持ちが同じとは限らない。
常に人の気持ちは変わる。
そして彼の気持ちも変わる。
そう、コラボを決めた時と同じとは限らないのだから。