昨日のうたコンを観た。
氷川きよしの進化が止まらない。
そう思った。

私が氷川きよしの意外性を見たのは、今年の6月のうたコン。
彼は一昨年出したロックの曲を歌いパフォーマンスした。その時の彼の潔さに今後の彼の歌手としての可能性を感じた。

一つの分野で名を成した人が全く違う分野で一から始めるのは、それだけでも非常な決意と勇気が必要だと感じる。
ましてや、氷川きよしと言えば、「演歌界の貴公子」という異名を取るほどの存在であり、彼の歌う演歌が好きという人は多い。その彼が数年前からコンサートではJPOPを歌っていたとは言え、これほど方向転換することに葛藤がなかったとは思えない。
それでも彼は方向転換をした。
9月に行ったコンサートはたまたま彼の誕生日だった。
「今日から演歌のカテゴリーを外します。歌手氷川きよしとしてアーティストを目指します」と彼は宣言した。
その宣言通り、コンサートの後半は、JPOP歌手氷川きよしであり、ロック歌手氷川きよしだったと思う。

あれから一ヶ月半。
あちこちの音楽番組や情報番組に出ている彼の姿は、どんどん進化している。
昨日の彼は、演歌の「え」の字も歌わなかった。
NHKから依頼された曲はスピッツの「ロビンソン」
JPOPの王道だ。

使われていた歌声は、見事なストレートボイス。
彼が習得するのに苦労したという演歌特有のこぶしは欠片すらどこにも存在しなかった。
さらに彼は歌声を抜いてきた。ファルセットを使い、フレーズの終わりの言葉の処理に響きを抜いていた。
これはJPOP特有の歌い方であり、この部分に演歌ではこぶしが入ってくる。
しかし、彼の歌にはどこにも存在しなかった。

井上芳雄とコラボしたザ・ピーナッツの「恋のバカンス」はさらに彼の特徴的な歌声が披露されていた。
先ず、二人の声の音質がピタリと合っていた。
この曲はメリハリのある歌声が求められる。
二人の歌声はそういう点でもピッタリだったと言える。
ストレートボイスの競演の世界だった。
そこには演歌歌手の欠片もなかった。

氷川きよしはこれからもどんどん進化するだろう。
潔く決断した人は強い。

「ジャンルに囚われずに歌いたい」
「人間氷川きよしとして見てほしい」

そういう彼からは、自由に何物にも囚われず歌いたい、という強い意志を感じる。

氷川きよしがこれからどこへ向かっていくのか非常に興味がある。
ファンはきっと彼と同じ景色を見るのだろう。
それがちょっと羨ましかった。