Superflyの歌の上手さは万人の認めるところだが、そのエネルギッシュな歌声よりも彼女の声の印象は優しく明るい音色にある。

十分すぎるほどのボリュームある歌声を持つ歌手は、えてしてその声を張り上げた歌い方に陥りやすいが、彼女の場合は決してそうでない。

綺麗に響きの揃った歌声は耳に心地よく響く。さらに低音部から高音部まで統一された音色と響きを持つのが特徴だ。

 

「輝く月のように」は、それほど歌い上げるという曲ではない。

サビの部分で繰り返される高音部は、彼女の最も得意とする音域であり伸びやかだ。全般に軽いタッチで歌われている。リズミカルに刻まれる前半部分に対して、後半のサビの部分ではおおらかに十分に伸びやかな声を披露している。

リズミカルに刻むBGMに対して、彼女の歌声はあくまでも横におおらかな音楽の流れを作っていく。

 

彼女のように高音部を得意とする歌手は中音部や低音部で響きが抜ける、または響きにくい為に地声で押して歌う場合が多いが、彼女は決して中・低音部でも響きが抜けることはない。持って生まれた歌声が、そのようなものだったのかもしれない。

いずれにしてもそのエネルギッシュな歌声は、しっかりと身体全身を使った歌い方にあると言えるだろう。

決して大きくない彼女の身体から、これだけの歌声が生まれるのは、しっかりとした背筋と腹筋に支えられているからだ。

 

歌手の身体の使い方はアスリートのように身体を使えてこそ芯の響いた歌声を披露することが出来る。

その声を手に入れるために、歌手は腹筋を鍛え背筋を鍛え、しっかりした体幹に支えられた筋肉を駆使することでボリュームのある歌声を遠くへ飛ばすことが出来る。

 

以前、彼女の特集をテレビで見たことがあるが、彼女は歌声よりも「歌詞を間違えることが一番怖い」と言って何度も何度も楽屋で歌詞の確認をしながら口ずさんでいた。

すべての曲を完全に暗記する、という彼女は、モニターに歌詞が映し出されても見ることはないのかもしれない。いや、もしかしたらモニターはないのかもしれない。

 

滑らかに発せられる歌詞はその地道な訓練に裏付けられた滑らかさと言ってもいい。

彼女もまた、言葉を大切に歌う歌手の一人である。