張りのある歌声。中音域から高音域の彼の特徴的な声が続く。
少し突き上げ気味な歌声。タンギングのエッジを深く切っていくことで尖ったリズムの上に言葉を載せていく。
そのような唱法を取ることでリズムと言葉が横に流れるのを防ぐ。

尖った歌声を継続するのは非常に高度なテクニックを要する。
ストレートボイスの彼ならではの歌い方であり、強靭な腹筋と背筋力が必要とされる。
リズムを立てていくことで、若干、言葉が不明瞭になる部分があるが、彼以外の歌手なら、おそらく曲全体の歌詞が不明瞭になるだろう。
キンとした金属的な歌声を立てていくことで、この楽曲の尖ったリズム感を表現している。

この尖った声の色も彼が発声を変えて進化していく中で身につけた色合いと言える。

尖った色。
濃厚で甘い歌声。
無色透明の抜いた歌声。

これらの特徴的な歌声を組み合わせていくことで歌は立体的になっていく。

彼の歌声、彼の音楽からは、いつも立体的な奥行きのある建造物をイメージする。
それはバランスのとれた音楽。
客観的な音楽。

歌は人となりを現す。

きっと彼は冷静で感情に流されないバランスのとれた考えの持ち主なのだろう。

そんなことを思った。