たったひとりのアーティスト、たったひとつの曲に出会うことで、人生が変わってしまうことがあります。まさにこの筆者は、たったひとりのアーティストに出会ったことで音楽評論家になりました。音楽には、それだけの力があるのです。歌手の歌声に特化した分析・評論を得意とする音楽評論家、久道りょうが、J-POPのアーティストを毎回取り上げながら、その声、曲、人となり等の魅力についてとことん語る連載です。
新年の年明けは、ロックの帝王矢沢永吉を扱います。一昨年にデビュー50周年を迎え、74歳という年齢を感じさせないパワフルなステージを展開し続ける矢沢永吉のデビューから現在に至る経緯と多くのファンを捉えて離さない彼の魅力について書いてみたいと思います。
(前編はこちらから)
歌声を音質鑑定してみると…50年以上続けられた秘密
矢沢永吉は現在74歳。1972年にデビューして以来、50年以上、歌い続けてきたことになります。それも、ロックという非常にハードな分野の歌を、です。
声帯のことだけを考えると、ロックは声帯にとっては負荷の大きい分野の歌で、特に彼のようにハードロックの場合は、声帯の負担は並大抵のものではないだろうと考えます。
ですが、1972年当時の歌声と現在の歌声を聴き比べてみても、それほど大きな差異を感じませんこれが矢沢永吉という人の並外れた強みであることは間違いないでしょう。
矢沢永吉の歌声を音質鑑定してみると、以下のような特徴を持つことがわかります。
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声域は男性の中声区のバリトン
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全体に少しブレスの混じったブリージングボイス
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艶のある清涼感のある響き
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響きに混濁がある
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歌声の芯の部分に濃い響きを持ち、その周囲をブレスの混じった響きが包み込んでいる
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芯の部分は鼻腔に響いた甘い響き
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中・低音域から高音域まで響きは変わらない
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話し声と歌声の響きに差異がない
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滑舌が非常に良く、ことばのタンギング(子音のアタック)にブレスが混じることが大きな特徴
彼の声の特徴としては、以上のようなものですが、特に感じるのは、話し声と歌声の差異がほぼ感じられないということです。これが彼が50年以上、歌声を保ち続けている秘訣なのかもしれません。
歌手の歌声には、2つのタイプがある
続きはこちらから矢沢永吉『50年、変わらない歌声を披露し続けるロック界の帝王』(後編)人生を変えるJ-POP[第41回]|青春オンライン (note.com)